勇者と認められる前のジークハルトを見つけ、積極的に行動を共にした。
防御魔法が認められ、私は神殿に呼ばれた。
神官見習いの幼いライオネル様。かわいい。
あれ?勇者ライオネル様と年齢に差がある?この世界は。
聖女の適性を調べられ、礼拝堂に入ることを許された。
チャンスが到来した。
膝をつき、女神レイラリュシエンヌ様に祈る。
像に近づく許可を頂き、隙を見て隠し扉を探したけれど見つからなかった。
焦って見逃すようなものではない。
隠し場所が違うのか、そこにクリア必須のアイテムはなかった。
ゲームと違う。クリアできないかもしれない。その恐怖。
その後、学園に連れて行かれ。推しに出会う。
魔法を教えてくれるレジェス先生。ゲームの設定より若い。
「来なさい、結界を施せるか試そう。」
学園の中庭。先に準備が整った手書きの魔法陣。
その中央に立つように促され。
「手を出しなさい。平を上に。魔法使いでありながら、あなたには基本知識がない。出生場所不明。あなたはどこから来たのですか。」
それは言ってもいいのだろうか。
「違う世界から。多分、召喚される聖女様と同じ場所。私は転移者。」
レジェス先生は私を見つめ、真偽を確かめようとしているのだろうか。
「召喚、まだ秘匿の情報です。あなたが聖女ではないかとも言われている。転移。そうですか。それなら、出来るかもしれない。」
ゲームで見た。私の望んだスチル。
レジェス先生から額にキスされるシーン。あぁ、眼福だわ。
もったいないけど、目を閉じる。
唇の柔らかさと温もり。触れたまま。
ずっと続けばいいのに。そう願ってしまう。
その時間も終わり。レジェス先生が私から離れ、手のひらを重ねる。
これはこれで嬉しい。
「集中しなさい。」
怒られてしまった。
気を引き締め、手のひらに集中する。
すると生じたのは恐怖。
「いやぁ!」
推しを突き飛ばしてしまう失態。
「あの、ごめんなさい。火だけは怖いの。」
「……あなたは聖女ではない。召喚されてもいないあなたが、ここに居る意味はなんでしょうか?」
レジェス先生の冷たい視線。
ここにいる意味。存在意義。私は。
ゲームに私、魔法使いマリーは存在しない。
ラノベであれば。この世界を救うのは私?
クリア必須のアイテムは、設定された場所にはなく。
私が、ここに来た意味は何かと問われても。
