『女神の加護を 受けし者は世界を救う』


「これは追放である。天上での存在は途絶え、消滅となる。これから地上に転生し、同様に転生した者を見つけて裁きを下すのだ。それが使命。」
追放。消滅。転生。人間となる。
そして転生者を探し出し、同じ人間になった者を殺す。
それが使命。
神は人類に、人を殺してはいけないと告げた。禁じられた行為。
人殺しは死をもって償う。それなのに。
転生して人となり、殺人が使命だと告げる。
天使・人間・動物に感情を与え、生と死を司り。絶対的存在。
与えられた使命。
永遠を生きる天上の使い達の消滅とは。肉体を持たず、透体の存在の途絶え。
人間の死は命の灯が消える事。
追放。転生。
人は死ぬと肉体を捨て天上にくる。
しかし天の使いとは別の存在。のはず。成り立ちが違う。そう教育を受けた。
「使命を全うする事を誓います。」
そう、命令は絶対。反逆もまた無だから。
追放されたのに。これから人を殺す。
愛も裏切りも……
「命は灯。風によって揺らいで消える。」
人間と違って痛みはない。肉体がないから。
天上での存在は途絶え。消滅。そして転生。
痛みと有限の命の肉体を持つ人間に。人として生まれ、双子として育つ。
聖女の適性があると言われ、当然だと思った。
ガーネットに素質がないと告げられ、私の中に答えのない疑問と違和感。
ガーネットを守らなければ、そう思った。

「オリアンヌ、あなたの魔法を見せて欲しい。」
何故、ガーネットがそんな事を言ったのか。
本人も興味本位で、意味などなかったかもしれない。
私が選んだ魔法は水だった。
畑に居て、水まきをしている途中だったから。
省略した詠唱と適当な魔法陣。手のひらを上にして、水の球体を形作る。
それを上空に揚げ、分散するように魔力を込めた。
雨のように降り注ぎ、それが光を受けて虹が生じた。
「綺麗。」
ガーネットの笑顔。
そして私には、水魔法を失った自覚。
生じたのは言い表せない恐怖。
今思えば。自分に刻まれた使命。
それを補おうとしたのかと、ガーネットを見つめ。
その時から抗う事は止めた。
ガーネットに奪われない剣技。
それを極める方が先だと思ったから。

魔王の復活。この世界、レティッシラ。
あぁ、私達が管理していた星。
女神レイラリュシエンヌ。名は消滅したはずなのに。
倒さなければならない魔王。リューテサッセウス。あなたを殺すのは私。
この世界の秩序は乱れている。世紀末。
最後の“女神”が、この世界を救う。