『女神の加護を 受けし者は世界を救う』

そっと距離を置いて見守る。
勇者ジークハルトは魔法が使えないけれど、みつけたオリアンヌを見守るために学園に来た。
最終的に、私も魔法が使えなくなった。
魔法の試験の度、違う魔法で対処してきた。
それを適性だと先生方は喜ぶ。
その都度オリアンヌに奪われているとも知らず。
そして学園の結界が張り巡らされた中。
突如として望む。恐怖。
勇者ジークハルトは不在。
ガーネットが狙って呼び寄せた。
私が殺す相手。
見つけた。時が来たんだ。
ユニアミの兄、ロレイン。
オリアンヌに向けた殺意。誘発したオリアンヌ。
あぁ、なんて巡り合わせ。
「……君になら、殺されてもいい。」
私に言って、その場を去ったロレイン。
そう。あなたを殺すのは私。私もあなたになら、殺されてもいい。
「オリアンヌ、あなたは魔王の討伐に行くの?」
勇者と共に行く。けれど、その未来は。
私はガーネットに答えることが出来なかった。

その夜。役目を忘れるなと、警告のように夢を見る。
私の奥深く刻まれた使命。
大きな扉がゆっくり開いて、私の入った場所は何もない空間。
無限に広がる光に満ちた影のない神聖な場所。
地面ではないけれど、足場の確保された道。
後ろで閉じた扉は音も無く消えた。
もう戻れないのだと、私は思った。
とても静かで、他の気配はない。
一面光の中にいると言うのに、感じるのは孤独。
道を真っすぐ進み、円形の足場。その中央に立つ。
どこからか聞こえてくる声。
「今後、その名を使うことを禁じる。故に消滅する時は本当の名が刻まれることもない。その覚悟があるか?」
ワタシは目を上げて答える。
「はい。新たな名で、与えられた役目を全うすると誓います。」
自分から言い出したこと。
その覚悟は、あの時に決まった。
「では、あなたの望んだことが成るように。」
これは反逆。
それなのに何故、送り出すかのような言葉を?
円形の外側から足元に迫る闇。
恐怖もなく、ただ目を閉じた。
「待て、私は許さないぞ!愛するモノに存在を奪われて、消えることが喜びなんて間違っている!」
あぁ、こんな時まで正論とは。
こんな風に別れが辛くなるし、決して理解してくれないと判っていたから内緒にしていたのに。
ごめん。もう決めたんだ。
ずっと共に居た君とも、永遠の別れだね。
許しは請わない。それが自分に与えられた役目だから。
あの時、決めたんだ。
私たちは必ず、また同じ時を繰り返す。
次こそは助けてみせる。
例え、あなたが私を殺すとしても。
一人で全うすると誓ったのに。
共に生れたのは、止めに入った君。
ガーネットは私が守り切る。