ガーネットが望むのは死。
魔物の手当てをするのは同情や優しさではなく、自分を殺してくれるモノを確保したいだけ。
「なぁ、……確か双子の。オリアンヌ、それに適性なしのガーネットちゃん。」
ガーネットは時間を気にして、先に帰ってしまった。
魔物は弱り果てているのか、眠っている。
私達の殺気も分かった上だろう。
私は剣を構え直し、勇者だろうと容赦はしない。
殺気立ち睨んだ私に目も向けず、ガーネットが去った方角に視線をまっすぐ。
「なぁ、何故ガーネットは死を望む?君が死を望んでいるからじゃないのか。」
私が死を。望んでいる?
今まで私の方を一切、見なかったのに。
勇者ジークハルトは探るような視線を向け。
「やっと見つけた。隠していたのはお前か、オリアンヌ。」
「……勇者ジークハルト、お前はまさか。そんな、どうして。」
隠してきた。誰にも見つからないように。
巡り会う運命。私も望んだ死。
この世界を救うため、勇者ジークハルトは選ばれた。
私も魔王の討伐に向かうだろう。
姉ガーネットを置いて行く。私達の目的は同じ。
「あいつは見つからないのか、オリアンヌ。殺せ、それが神からの命令。忘れたとは言わせない。」
忘れていた。お前に会うまで。
だから死を願った。
神からの命令だったからこそ。死を望んだ。
「予告された魔王の復活。まだ時は来ていない。オリアンヌ、あの魔物はお前が殺せ。ガーネットを守れ、命を懸けて。俺もオリアンヌを守るから。」
簡単に言ってくれる。魔物を殺せ?
無理だよ、お前はそれが分かったから引くんだろ。
ガーネットが守護を与えた。
自分を殺すモノとして、誰にも害を及ぼすことが出来ないように。
いくら私でも近づけない。
学園に被害が出るとしても、ガーネットの守護が解除されることがないかもしれない。
そう私は思った。
けれど、数日後。
料理を与えると約束したユニアミに心許し、その守護が解除された。
近づくことが出来なければ、餌を与えることが出来ないから。
無意識だろう。だから隙が出来た。
私は魔物を殺す。
ガーネットに悲しみはなかった。自分を殺せるモノを失った怒りだけ。
そう、ユニアミがガーネットに向けたのは。殺意。
だからガーネットは油断したんだ。
きっと心地良かっただろう。
ユニアミの優しさだと思ったんだ。なんて悲しくて純粋な願い。
ガーネットは消えたいと願い、その願いを叶えようとするユニアミの殺意。
優しさと勘違いするなど。
まだガーネットはあきらめていないのだと気づく。生きる事。
死を願う私がそばに居てはいけない。
