『女神の加護を 受けし者は世界を救う』


ガーネットは教会に居る時間帯なのに、嫌な予感がする。
私がいないから、また抜け出したのだろう。
一体、どこに。

教会付近を見渡し、中央広場の噴水まで走りながら探して見つからず。
立ち止まる。
この気配は。魔物?まさか。
弱弱しい気配を辿り。行きついたのは結界の施された学園。
中にいるはずがない。
壁に沿って歩き、行きついたのは学園の裏側。
壁の小さな隙間に、入っていく人影。
私はその後を追うように、中に入った。
まだ道が出来る程の行き来はないのか、手入れも杜撰な覆い茂る草木。
人がかき分けた跡が少し。
方向感覚が分からなくなるのは、結界のせいだろうか。

自分と同じ年頃の、男の後姿。背中に矢筒。
片手がそこから矢を一本抜き、弓を構え。静かに音もたてず。
視線を真っすぐ、集中しているのか私に気づかない。
その視線の先に居たのは。
識別したと同時、私は剣を抜いて男の首元に寸止め。
「動くな。」
「……女の子には当てないよ。あれを取り逃がしたのは俺だから。」
あれを取り逃がした?
見つけた姉の先に居たのは魔物。
「っ」
息を呑む。
こいつより、あの魔物を殺さなければ。
剣を首元から離し、構え直して数歩。
彼は進んだ私の手を引き留め。
「待ちなよ。……すごいね、彼女。」
いや、こいつも殺さないといけない。
ガーネットを見つめ、目を輝かせて。
殺す。言い訳などさせない。
「殺気を出すなよ、気づかれるぞ?」
私に目を向けず。
こいつを殺すのは確定で、魔物をどう始末するか。
ガーネットを心配したけれど、手当てをしようとしている姿に、私も見つめる。
水魔法と炎の魔法を同時に、制御も完璧で。無意識の浄化。
私も無意識で。剣を後方に居た奴に向ける。
口封じをしなければ。
「ふふ。邪魔しないでよ。俺だって見たいんだからさ。」
音もたてず、矢を筒に戻す。
私の横に並んで。
「あぁ。噂の双子か。噂と違って、彼女は聖女様のようだね。おっと、だから殺気は出すなって言っただろ。俺は勇者だ。彼女を守りたいなら、殺すな。」
最近、勇者がみつかったと聞いた。勇者ジークハルト。
こいつが魔物を逃さなければ。
オリアンヌを守るのは、勇者ではなく私だ。