『女神の加護を 受けし者は世界を救う』

呼んでもいないのに、オリアンヌは腰のある剣に手を当てたまま。
無表情で近づいてくる。
「オリアンヌ、いつからいたの?」
「ずっと。」
ずっと。無表情のまま平然と。
「ふ。ククッ。」
何がおかしいのか、和んでしまっては殺意など程遠く。
「これから、あなたはどうするの?」
きっとロレインは全てを把握して。
答えが出ているのだろう。
「何を?」
何を。どうするか。
「私の興味のない事まで含まれても。……ユニアミは、魔王討伐に付いて行くのね。」
「そう。あの子は優しい。宿命だと思っているようだ。俺が、どれだけの邪魔をしても。覆らない。……優柔不断な王子ユーリス。甘くて見ていたんだ。お菓子を渡すだけで、満足しているようだったから。」
私にも、ユニアミは国母など望んでいないように見えた。
それなのに。この世界の未来を左右するモノを所持している。
曇りのない決意の視線。
まるで聖女のように。

私を見ていない。
彼女が見ているのは、この世界での生活。
身近な人との幸せな未来。
「だから止めないのね。……あぁ、嫌だ。ここが転換点なのかと、気づいてしまった。私に意味など求められても困る。」
私は文句を言っているのに。
ロレインはその場から消える。
オリアンヌは剣から手を放し、空を見上げた。
私も見上げる。
学園に施された結界。完璧な魔法。
「寮に帰りましょう、オリアンヌ。……あなたは魔王討伐に行くの?」
私の後ろを歩くオリアンヌは質問に答えなかった。
迷っているのかな。
私の未来が分からないから。
あなたに分からないことは、私にも分からない。

その数日後、魔法使いマリーは行方知れず。
学園に施された結界は消えた。
補うように、神官ライオネル様が同等の結界を施し。
何事もなかったかのように、日々は過ぎて。
私達は学園を卒業した。

予告された魔王の復活。
王命を受け、魔王討伐に向かう一行。
私は城門の人だかりに紛れて見送る。
勇者ジークハルト様を先頭に。王子ユーリスと、側近の騎士フリック。そしてユニアミ。
学園で魔法を教えていたレジェス先生。妹オリアンヌ。
私は行かない。オリアンヌは死なないから。
傍観者、だと思っていたんだけどな。
違った。それは、どこから決まったことなのか。
「ガーネット、どうして行かないの。君がいないと。」
気配なく現れたロレインは旅の準備が万端。
ユニアミを遠くから見守るのだろう。
「あなたには、もう私を殺して欲しいなんて頼まない。……あの子は渡さないわよ。」
私は、まだ死ねない。




to be continued