『女神の加護を 受けし者は世界を救う』


廊下を走って、殺意を向ける者が居る場所に向かう。
学園にいない。いてはいけない年齢。
何とも不思議な巡り合わせ。

殺気がしたのは学園の裏庭。誰にも気づかれない場所。
そこに面した窓だったから、もしかしてと試した結果。
釣れた。優秀な人。
そう、あのユニアミに触れた一瞬で。
結界の施された、この学園に誰にも悟られることなく侵入したのだから。

息切れ、額の汗を拭う私に姿を現し。
殺意は消えて、不機嫌ではあるけれど。
残念、ユニアミと仲良くしていると思われただろうか。
「で?確か適性なしの双子の出来損ないって噂のガーネット。何が目的だ?」
まぁ、封印に触れられたら起こるのは当然で。
それを壊すでもなく、ユニアミの敵でもなく。知りたいのは目的。だろうな。
「そうね、私を殺してくれるかと期待した。残念。……いえ、そうでもないかしら。交渉次第では。」
まだ私には手がある。
自分を殺してくれる方法を模索する。
目の前に居るのはユニアミの兄ロレイン。
「交渉ねぇ。しかもガーネット、君を俺が殺すとか。それではユニアミの近くに居られなくなるじゃないか。……まぁ、もう手遅れかな。俺が何もしなくても、ユニアミは魔王討伐に付いて行くだろう。」
この人の役割は終わったかのように。沈んだ表情。
面白くない。もっと願えばいいのに。
自分を解放して、自由になればいい。
「ロレイン、あなた復讐をしたくない?」
そう。あなたの願いはまだ、叶えるものがあるの。
簡単に終わらせない。私が死ねないのに。
「……俺が復讐?する相手……」
なんて頭の良い人だろうか。
少しの言葉、情報で答えを探す。
ユニアミ、あなたも頭が良い。そんな人は面白いから、とても好き。
無駄に生きている時間を忘れてしまえるから。
「キサマか?」
あぁ、また芽生えた殺意。
このまま殺されてもいい。心地良さ。酔いしれる。
きっと私は笑っていたと思う。
「違うな、学園にいるとすれば。……なるほどね。で?その確証は?」
殺意の中の冷静さ。
素敵な人、ただ妹を守るために生きてきたのだろうか。
優秀なのを隠して、ただの冒険者の一人。
勇者に選ばれなかった理由は。きっと魔王など興味がないから。
それでも旅には同行しないのね。
「ふ。なるほどって、答えが出ているじゃない。そうね、私の願いは叶えてくれる?」
「無理だね。君の妹が、すでに俺を狙っている。」
「はぁ。残念ながら、妹オリアンヌだけは視えないのよね。呼んでもいい?どうせ、何もしないわ。分かるでしょ?あなたと同類なのだから。」
そうロレインは妹を守るために生きてきた。
私の妹オリアンヌは、姉の私を守りたいと言う。同類。