『女神の加護を 受けし者は世界を救う』

観察を続ける。
魔法の授業。試験の座学や実践。それで一番の成績なのは魔法使いマリー。
得意の魔法は何かしら。この学園の結界を施したと聞いた。防御系。
聖法にも通ずる。なのに、聖女見習いにもならず。
見つかった勇者と魔獣や魔物を倒して、予告された魔王を倒す旅にも同行するのだとか。
欲がないようで、目的が不明。
欠点は火が怖い事。炎の魔法を使わない。
使えないわけないよね、だって私には視えるもの。適性の魔法が。
そう。きっと特別な人に違いない。聖女候補者なのだろうか。
全て視えるならもっと楽しいのに。
私に視えるのは数名。この能力がなんなのか知らない。
双子の妹オリアンヌには、きっと別の能力がある。
視えないけれど、片割れだからこそ感じる何か。

お昼、学食で食事を終えて次の教室に移動する廊下。
そこでユニアミから声を掛けられた。
「ガーネット、もしよかったら。試作のお菓子を食べて、感想をもらいないかな。」
観察していたのを感づかれたのかな。
近づきすぎたかもしれない。
「ありがとう。」
差し出されたお菓子を手に取り、口に運ぶ。
上等なバターの香り。口に広がる甘さ。
「美味しい。これも王子様に渡すの?」
嫌味など言ったつもりはないのだけど。
ユニアミは曖昧な笑顔。
「そうね。食べてくれると嬉しいのだけど。」
「婚約者が邪魔なら、私が何とかしようか?」
私の願いが叶うなら。
聖女のようなユニアミを悲しませるのが、誰だろうと。
「ふふ。あなたは強いのね。私が思ったよりずっと。」
言っている意味が分からない。私が強い?
首を傾げた私に。
「あの人に婚約者がいない。不思議よね。予告された魔王の復活が近いなら。」
婚約者不在。それは。
「ユニアミ、前髪に何か付いている。取るから触れてもいいかしら?」
「え、うん。お願い。」
私は手を伸ばし。
封印の施された場所に、そっと近づけた。
ジリッと痺れるような痛み。
あぁ、私の願いを叶えてくれるかしら。アナタは。
湧き上がる歓喜。口元が緩んでしまう。
指を前髪に二回ほど払うように触れて。
「くすくす。ユニアミ、これからは誰にも触れられないようにするべきよ。油断は禁物。何をされるか分からない学園。そうね……けど何かあれば、私が助けになるわ。あなたは秘密を守ってくれたから。」
私は気づく。
あぁ、この人は魔物を助けたかったんじゃないのだと。
そして、窓の外。私に向ける殺意の視線。
なんと心地いいのだろうか。
アナタは私を殺してくれる?
もう、ユニアミは必要ない。
私の邪魔をするとすれば、妹オリアンヌ。

ユニアミと別れ。外に向かう。
私が願うのは死ぬ事。