『女神の加護を 受けし者は世界を救う』


聖女とは。
聖女見習いは自発的な申し出が基本条件。
強制されてなれるものではなく、神殿に奉仕し、女神レイラリュシエンヌ様に使える事。
規則正しい生活。清廉潔白。
絶対条件は、ある程度の魔力を持った者。

聖女の適性がないと言われたなら、私に魔力はなかったことになる。
けれど、水の魔法と火の魔法。生活魔法の浄化。
特に最後の浄化は聖法の基本。
私が妹オリアンヌから奪ったもの。
奪った記憶がない。いつ、どのように?
私が聖女?いいえ、聖女は私にとってユニアミ。
ただ彼女だけが相応しいと思う。

魔物が死んで、オリアンヌはギルドに報告をした。
死体を片付けたのは、王から一任された家系。
聖女見習いに実子が立候補したと。
魔物を手当てした布は剥がされていた。
私が匿っていたのは、ユニアミしか知らない。
約束を守って、誰にも告げなかった。優しい人。
ユニアミのお兄さん、オリアンヌが魔物を殺さなければ、学園に居たのなら被害にあっていたかもしれないのに。
聖女見習い。彼女にも同学年に兄がいた。なんて巡りあわせだろうか。
私が殺したかもしれない人々。
その被害を食い止めたのは、私の双子の妹オリアンヌ。
私は聖女じゃない。
なれない。なってはいけない。罪を犯したから。
未然に防がれたからといって、それがなかったことにはならないから。
私は私。
ユニアミの魔法が封印されているなら、私も魔法を使わない。
どうせならオリアンヌに返したい。
私には必要のないものだから。

少し興味が湧いた。
きっとユニアミを聖女にしたくない誰かが封印した。
それが害を成すものなのか。
もしそうなら、命を懸けて邪魔したい。
とても優秀な人。
私もユニアミを、みんなの聖女にしたいわけじゃない。
けれど、聖女として認められた彼女を見てみたい気もする。
矛盾するこの気持ちは何だろうか。
なんて楽しいのだろう。

授業などどうでもいい。
魔法の授業をするレジェス先生。
魔法の適性がないと言われたのに、きちんと授業を受けるオリアンヌ。
本当に魔力がないのだろうか。
嘘はついていないと思う。私が奪った記憶はない。
ユニアミのように、誰かに封印されている様子もない。
封印、触れたらどうなるかしら。
きっと尻尾を出すに違いない。
あぁ、私は殺されてしまうかも。
『私が守りたいのは、お姉ちゃんだから』
まさか。私の片割れ。どこまで私を先読みしたのか。
憎い。邪魔させない。
今度こそ。私を確実に殺してくれる人を探す。
誰でもいい。
一番の願いは。叶わないから。