学園に入った後。
ユニアミが望んだのは、王子ユーリスや側近の騎士フリックと仲良くなることだった。
もちろん、私にも声をかけてくれた優しい人。
だけどね、あなたじゃないの。
私が欲しいのは。
それは偶然に遭遇した場面。
放課後、魔法のレジェス先生がユニアミに告げた。
「あなたに魔法の適性がありません。」
私は魔法が使える。
一番の成績をとれるほどではないけれど。
同じ適性がない人を見つけ、自分が持っている能力に安堵し。
見下した。いいえ、常に劣った立場でありながら。
妹オリアンヌに敵わない存在を、常に見下してきたのだ。
剣で負けたお父さん。
魔法を呆気なく使い、応用までされて教えることが無くなったお母さん。
存在価値を、双子の優秀な妹に見出して。
憐れな人達。私は違うと。
あぁ。こんなに楽しい事があるだろうか。
先生も理解していない。
きっと優位に立ってきた優秀な人だから。
得意な魔法で、それも自分に特別に与えられたと思っている無詠唱の魔法で。
より優れた魔法の施されたユニアミ。
ユニアミ、あなたは呪われていた。
それが誰なのか私は知らない。
知りたいとも思わないし、言う義理もない。
もうあなたは、聖女の適性がない私と同じ。
魔法が封じられたかわいそうな人。
そう思っていたのに。
あなたには魔法など使えなくても、得意な料理があった。
あなたのレシピは人気で、学園の食堂も賑わい。
城下町に菓子店が増えていった。
なんて素敵な人だろうか。
私にとって、あなたが聖女。
私は知っている。
あなたのレシピが世界の病蔓延から救ったのだと。
「姉さん、授業を受けないのはいけない。」
「オリアンヌ、あなただけでも私を名前で呼んで欲しい。オリアンヌの姉ではない私でいたいから。」
「わかった。ガーネット、行こう。授業に。遅れるといけない。」
オリアンヌは変わらず無表情で。私の前を歩いて行く。
お父さんが教えた剣術。
それは歩き方も、まるで騎士のように。
整然とした身なり、隙のない警戒心。視界はあらゆるものに目を配り。
何をそんなに焦っているのか。片割れの私にも分からない。
聖女の適性があるオリアンヌ。
だけど本人が否定した。なれないのだと。それは。
「ガーネット、私に魔法の適性はなかった。聖女に必要な適性があると言われた後、失われたんだ。奪ったのは、あなただ。ガーネット。あなたには聖女の適性があることになる。」
私に目もむけず告げられた。
私に聖女の適性がある事。
