『女神の加護を 受けし者は世界を救う』


珍しい双子。
前例が古い巻物に記されただけの貴重な存在。
周辺諸国にまで噂が広がるほどだったと、両親は常に語ってきた。
そして褒めるのは優秀な妹。
私は常に妹と比べられ、見下げられてきた。
それでも私は私。
出来ないものは諦める。時間の無駄だから。

お父さんは冒険者。
この城下町、職と言えば専門職か冒険者。
私には何が向いているだろうか。
妹オリアンヌは何でもできる。表情は常に無。
何が面白いのだろうか。
努力もせず、言われたことをそのままに。口ごたえもせず。
お父さんは、オリアンヌに剣の扱いを教えた。
みるみる上達をし、すぐにお父さんを倒せるまでになり。
お母さんは、オリアンヌに生活魔法を教えた。
それを吸収し、応用して見せ。
私は見ているだけだった。教えてもくれない。
話しかけると怒られる。オリアンヌの邪魔をするなと。
オリアンヌの邪魔をしているのはあなた達だ。
自分の能力もないのに、教えてすぐに抜かれて。
それを喜ぶ意味が分からない。
もっと良い先生を与えてあげればいいのに。
まぁ、冒険者の父では無理な話。
それでも最低限の生活の中。

私とオリアンヌは、お昼に教会に向かう。
そこで振舞われる料理。
最近では、濁ったような色だけど水のように飲める甘いもの。
不思議な味。どこか元気になれるような。
「オリアンヌ、昼からはどこにいくの?」
「神殿。」
「そっか。聖女見習いになるの?」
「ううん。ならない。なれないよ、私は。私が守りたいのは、お姉ちゃんだから。」
目も合わせず、遠くを見るように無表情で。
私を守る?何から。
むしろこの冷遇された生活は、オリアンヌがいるから。
普段、あまり会話もないのに。
この時だけだ。まともな会話をしたのは。

食事を終えたオリアンヌは立ち上がり、振り返りもせずに去っていく。
私は年齢によって区切られた教育をその他大勢と共に受ける。
頭が悪いわけでもない。動きが鈍いわけでもない。
普通か、オリアンヌを見ているから普通よりは上のような気がする。
それでも両親にとって、オリアンヌより劣る価値のない双子の片割れ。
そう。双子だから生きているのだと思う。
お父さんの稼ぎでは、両方とも学園には通えない。
けれど、双子で入学する意味。
私に死なれると困るのだ。