この世界レティッシラ。
女神レイラリュシエンヌ様の加護を受け、聖女として認められた私エルティナ。
魔王リューテサッセウスの復活まで猶予がなく。
学園での生活を送りながら、神官ライオネル様からの補佐を受け。
聖女として、リセ様の模範に習って生きる。
勇者ジークハルト。魔法使いのマリー。
学園の卒業後、彼らと冒険の旅に出て、魔王城への道のりを歩む。
その前に情報の交換を繰り返し。
時にギルドからの要請で、共に依頼を受けて国民を救う。
学園と神殿で精一杯だったリセ様になかった役割。
けれど、王子ユーリスの婚約者だった私には、本来救うべきはこの国民。
失った未来での役割を、果たせなかった代わりに。
今、私に出来る事を。
「聖女レルティナ、何故そんなに無茶をするんだ?」
無茶。強引だったのは認める。
だけど、勇者を喪うわけにいかない。
この世界を救わなければならないから。
「ごめんなさい、どうすればもっと上手く協力できるか教えてください。」
頭を下げ、私は返事を待つ。
「今日は、ライオネル様はいないの?」
魔法使いマリー。
それは、ライオネル様の教育を問うためだろうか。
顔を上げ、視線を向けるとマリーは優しい微笑みを見せる。
「注意してもらわなきゃ、大事な聖女様を喪うわけにはいかないからね。」
あぁ、誰も欠けてはいけない。
この世界を救うためには。
「マリー、聖女様を頼む。少し矢の補充をしてくるから。」
「えぇ。ついでに訓練が終わった報告もお願い。」
勇者ジークハルトとマリーの連携はとれている。
それに私と、他の追随する者が増えれば。
もう出発の日も決まり、猶予などない。
「ねぇ、聖女様。教えられないなら、言わなくてもいいんだけど。女神レイラリュシエンヌ様の加護はあるのよね?」
マリーの質問の意図が分からない。
「聖女として相応しくない答えかもしれない。けれど、あなたと死線を渡るから嘘偽りなく答えると。自覚がない。」
そう。多分、聖女リセ様を見たから。
私は違う。なれない。同じではない。
「……与えられた物を何か、その。持っていないのですか?」
物?加護とは。
答えに困っていると、マリーは青ざめ。
口に手を当てて、その場に崩れるようにして座り込む。
「大丈夫ですか、誰かを呼んで。あ。」
「マリー!」
戻ってきた勇者ジークハルトと、神官ライオネル様。
何があったのか聞かれたけれど、私にも分からない。
