「で、なんでだ。」
「なんで、って言われても…。」
答えるつもりなんて毛頭ない私に、桂はしつこく質問する。
極力言いたくない。それでも桂は詰問してくる。
視線を落として深いため息をひとつ落とす。諦めるしかないか…。
「電車降りたら話すから、ちょっと黙っててくんない?」
「……わかった」
すし詰め状態のサイアクな状況、誰が聞いてるかもわからないのに、こんなこと話したくない。声を押し殺してそういうと、桂は了承こそしたものの、眉間に皺を寄せて黙ってしまった。
正直ほっとしたのは事実だ。麻由とかと一緒になって男の子と話すのは大丈夫だけど、一対一で話すのは今の私にとっては酷すぎる。
緊張の糸が張り詰めたまま、電車はホームへと滑り込んで、緩やかに止まった。


