狼少年

桂は何か言いたげな雰囲気を纏ってはいるものの、それ以上私になにか話しかけてくることはなかった。桂の視線が背中に突き刺さってる気がした。満員電車だからってのもあるけど、肩身が狭い…。

「おい、」

電車が減速して、降りようとしたら先手を取られた。鞄がつかまれてる。

「…何?」

立ち止まって、おそるおそる振り向いた。桂の言いたいことはわかる。

「なんで此処で降りんだよ。高校は次だ。」

「いや、人が多いから移動しようと思って。」

君もいることだしね。まぁそんなことは口には出さないけど。

「俺も行く。」

「え?いや来なくてい…っ」

慌てて口を抑える。意外な返答に思っていたことがつい…!

「なんでだ。」

「は?」

「俺のことキライなわけ?」

「いや、っていうかなんでそんなこと聞くわけ!」

電車を降りようと思ったのに。ある程度人が降りてまた乗り込んできたら、電車はドアを閉じてしまった。

「なんでって。お前に興味わいたから?」

「なっ…」

「あやこ声でかい。」

指摘されて慌てて声のトーンを落とす。周りの乗客がこちらをちらちら見てることに気付いたから。

「っていうか名前で呼ばないでっ」

「俺お前の苗字知らないし」

「はぁ?!」

普通話したこともないクラスメートだったら、苗字しか知らないもんじゃないの?!なんで私の 名前だ け 知ってんの?!イミわかんない!