狼少年


「げ…」

「げってなんだ。」

高圧的な態度。今一番会いたくない人物に遭遇してしまった。しかも真後ろかよ。

「お、おはよ。」

首が辛い。そして出来ればこの場から逃げ出したい。桂は私のすぐ後ろに居た。ずっと下向いてたから全く知らなかった。ってかなんで気づかないんだ、私…!

「前向いとけ。首いてぇだろ。」

ため息とともにそう言われたから、私はその言葉に甘えて体勢をもとに戻す。そして気付かれないように桂から1歩離れる。

「おまえ…。」

怖い。びくびくしながら知らないふりが出来ることもなく、私は桂に「何?」とだけ答える。

「まだ体調わりぃのか?」

「へ?」

「顔色が悪い。ってか昨日も勝手に電車おりやがって…。」

「え、あ、はは…」

笑ってごまかしてみる。逃げたい。即刻この場から走り去ってしまいたい衝動に駆られる。

だって言えないじゃん。男が嫌いだから近づきたくないんだなんて。