言葉に詰まる。だって、此処で是と答えても非と答えても、この状況から逃れることはできない。地元に着くまでは私は電車から降りられないのだ。
だって、逃げ道には桂がいる。
「聞いてんのか?」
「聞いてるけど、」
不審そうにこちらを窺う奴に、私はハラハラした。それ以上こっちに来るなって叫びそうになる。
「…」
「…」
沈黙が流れた。電車がスピードを落とした。桂はどこの駅で降りるのだろう。此処で降りてくれたりは…しないかな。
「とりあえず、降りるぞ。」
電車が止まるときの、前後の揺れでバランスを崩したときに、私は再び腕をつかまれた。
その腕を勢い良く払ったのは私の右手だ。私自身もびっくりしたけど、払われた桂も相当驚いたみたい。
「っごめん!」
その場の空気に耐えられなくなって、そう叫ぶと同時に私は桂の居ない方の扉を開けて、電車を降りた。


