あの子は変わっていなかった

「あ…」

「あっ」

今日入学した四宮高校の校舎裏で。

私– –村瀬梨音(ムラセ リノン)は、元イジメっ子で元クラスメイトの萩原菜緒(ハギワラ ナオ)と再会した。

私は中1の時、菜緒に散々イジメられ、中2に進学したと同時に不登校になった。


– –まぁ、イジメに耐えられなくて不登校になったっていう普通の理由で不登校になったわけじゃないんだけどね。

胸に抱いていたノートをぎゅっと抱きしめ、平静を装って菜緒に話しかける。


「久しぶり、菜緒ちゃん。元気だった?」

「う…うん」

菜緒が驚いているのが一目で分かる。

そりゃそうだろう、自分を恨んでいるハズのイジメられっ子からなにごともなかったかのように話しかけられたら。

でも残念、イジメられていた時も、不登校だった間も、そして今も、イジメられた時の恨みはすごくすごーくあるからねっ?

こっそり深呼吸をしたあと、〝あること〟をたしかめるために話し出す。

「でも、菜緒ちゃんと同じ高校なんて嬉しいなぁ。でも、クラスは違うみたいだからまたイジメられないみたいでよかったな。中1の時イジメられた時は、とても辛かったもん」

「……」

今にも、それがなに?と言い出しそうな菜緒。

よかった、ここで謝られたら更生してるってことだから2年間練った〝計画〟がパーになるところだった。

イジメられっ子って何年経っても変わらないんだなぁ。

心の中でクスクス笑う。

「話は終わり?もう行くから」

菜緒がそう言って立ち去ると、私は胸に抱いていたノートの1ページ目を開いた。


【復讐計画ノート】


1ページ目の冒頭に踊るその文字をさらりと撫で、笑みをこぼす。

このノートにまとめられている全ての計画をまとめるのに丸2年かかった。

分かる人もいると思うが、私が不登校になった理由は、この復讐計画を練るためだった。

まぁ、中学校の2年間を丸々ムダにしたけど、完璧な復讐計画ノートができたから後悔は1ミリもしていない。

ふふっ…ふふふふふっ!!

今にも口から飛び出そうなその笑いを、なんとか引っ込める。

次に心の底から笑う時は、菜緒へのイジメの復讐が成功した時だって決めたから。


そして私は、どんどん小さくなっていく菜緒の背中を追いかけた。


  – –胸に、大事な大事な復讐計画ノートを抱いて。