19話 今日はこれでよかった
大地は勘定を済ませると、何でもない顔で財布をしまった。
「なんか誘ったのに……しかも2次会も来てくれるのに、ご馳走になっちゃってごめんね」
みいなが言うと、大地は一瞬だけ目を伏せて、それから軽く笑った。
「いやいや、いいって。みいなの分くらいさ……」
その言い方が、変に気負ってなくて。
だから余計に胸の奥が、ちょっとだけ温かくなる。
「……ありがとう」
店を出ると、夜風がほどよく酔いを冷ましてくれた。
賑やかな通りを抜けて、駅へ向かって並んで歩く。
「また、送るよ。改札まで」
「うん」
少し歩いてから、大地が思い出したように聞いた。
「あ、そういや2次会って、どんな服で行けばいいんだろ」
みいなは「ん?」と足を緩める。
「わたしはさ、結婚式の服のままだから……ドレスっていうか、ワンピースだけど。男の人って、2次会でもスーツの人多いかな?」
「そっか……そうだよな」
顎に手を当てて考えてから、大地はぽつりと言った。
「せっかくだから、いいやつ新調しよっかな」
「え?わざわざ?」
思わず目を見開くと、大地は照れたように視線を逸らす。
「いいやつ欲しいって思ってたし。それに……みいなの同伴なら、恥かかすわけにいかねぇだろ」
その言葉が、冗談みたいで。
でも、どこか本気に聞こえて。
(……大地)
胸の奥で、何かが静かに揺れた。
「じ、じゃあ、それ!」
みいなは少し勢いで続ける。
「その新しいスーツ、わたしも買いに行くの付き合う」
「え?」
大地が目を丸くする。
「いいのか?」
「うん。もちろん」
自然に出た返事だった。
考えるより先に、そう言っていた。
改札前で足を止める。
「じゃ、また連絡するな」
「うん。今日はありがと」
手を振って別れて、改札を抜けてから、みいなはスマホを取り出した。
画面には、拓也からの通知が溜まっていた。
📱
「えーー!
そんなの切り上げてこっちおいでよ」
「みいなちゃーん?」
「未読スルー?あー、俺かわいそー」
連打されたメッセージ。
しばらく眺めてから、みいなはふっと息を吐いた。
(……なんか、滑稽かも)
自分の都合ばかりで、相手の時間や気持ちは後回し。
それを「甘い言葉」で包んでくるところも、もう少し前なら嬉しかったはずなのに。
画面を暗くして、みいなはバッグにスマホをしまった。
胸の奥に残るのは、さっき大地と歩いた夜道の静けさ。
派手じゃないのに、ちゃんと“隣にいる”感じ。
(……今日は、これでよかった)
そう思えたこと自体が、みいなにとっては小さな変化だった。
大地は勘定を済ませると、何でもない顔で財布をしまった。
「なんか誘ったのに……しかも2次会も来てくれるのに、ご馳走になっちゃってごめんね」
みいなが言うと、大地は一瞬だけ目を伏せて、それから軽く笑った。
「いやいや、いいって。みいなの分くらいさ……」
その言い方が、変に気負ってなくて。
だから余計に胸の奥が、ちょっとだけ温かくなる。
「……ありがとう」
店を出ると、夜風がほどよく酔いを冷ましてくれた。
賑やかな通りを抜けて、駅へ向かって並んで歩く。
「また、送るよ。改札まで」
「うん」
少し歩いてから、大地が思い出したように聞いた。
「あ、そういや2次会って、どんな服で行けばいいんだろ」
みいなは「ん?」と足を緩める。
「わたしはさ、結婚式の服のままだから……ドレスっていうか、ワンピースだけど。男の人って、2次会でもスーツの人多いかな?」
「そっか……そうだよな」
顎に手を当てて考えてから、大地はぽつりと言った。
「せっかくだから、いいやつ新調しよっかな」
「え?わざわざ?」
思わず目を見開くと、大地は照れたように視線を逸らす。
「いいやつ欲しいって思ってたし。それに……みいなの同伴なら、恥かかすわけにいかねぇだろ」
その言葉が、冗談みたいで。
でも、どこか本気に聞こえて。
(……大地)
胸の奥で、何かが静かに揺れた。
「じ、じゃあ、それ!」
みいなは少し勢いで続ける。
「その新しいスーツ、わたしも買いに行くの付き合う」
「え?」
大地が目を丸くする。
「いいのか?」
「うん。もちろん」
自然に出た返事だった。
考えるより先に、そう言っていた。
改札前で足を止める。
「じゃ、また連絡するな」
「うん。今日はありがと」
手を振って別れて、改札を抜けてから、みいなはスマホを取り出した。
画面には、拓也からの通知が溜まっていた。
📱
「えーー!
そんなの切り上げてこっちおいでよ」
「みいなちゃーん?」
「未読スルー?あー、俺かわいそー」
連打されたメッセージ。
しばらく眺めてから、みいなはふっと息を吐いた。
(……なんか、滑稽かも)
自分の都合ばかりで、相手の時間や気持ちは後回し。
それを「甘い言葉」で包んでくるところも、もう少し前なら嬉しかったはずなのに。
画面を暗くして、みいなはバッグにスマホをしまった。
胸の奥に残るのは、さっき大地と歩いた夜道の静けさ。
派手じゃないのに、ちゃんと“隣にいる”感じ。
(……今日は、これでよかった)
そう思えたこと自体が、みいなにとっては小さな変化だった。
