ベッドの隣は、昨日と違う人

18話 大地に、来て欲しい






追加オーダーしたチキン南蛮と串が運ばれてきて、テーブルが一気に賑やかになる。
炭の匂いと甘酢の香りが混ざって、みいなの肩の力が少し抜けた。

「ほら、これ絶対おいしいやつじゃん」

箸を伸ばしながら笑うと、大地がビールジョッキを軽く持ち上げる。

「だろ。ここ、外れたことないから」
「んーっ、ビールに合う~!」

二人で食べて、飲んで。
仕事の話とか、高校のときのどうでもいい話とか。
気づけば、胸の奥に溜まっていた重たいものが、少しずつ薄れていく。

みいなはグラスを置いて、ふっと息をついた。

「ねぇ……やっぱり大地といると、楽しい」

大地は一瞬、箸を止めたけど、すぐ何でもないふうに笑う。

「なにそれ。急にどうした」

「いや、なんかさ……」

言葉を探して視線を泳がせる。
拓也からのLINEを断った指先が、まだ少し熱い。

「無理しなくていいっていうか。考えなくていいっていうか」

大地は黙って聞いていた。
急かさないし、結論も言わない。

その沈黙が、逆に安心で。

「……あのさ」

みいなが、少しだけ声を落とす。

「2次会……来て、ほしい」

言い終わってから、心臓が一拍遅れて強く打つ。
大地はグラスを置いて、みいなをまっすぐ見た。

「俺で、いいのか?」

その聞き方が、軽くなくて。
冗談にも逃げられなくて。

「……うん」

短く返した声が、自分でも驚くくらい素直だった。

「大地が、いい」

少し間があって、
大地は苦笑いみたいに口元を緩めた。

「ずるいこと言うなよ」

そう言いながらも、拒む気配はない。

「じゃあさ、もうひとつ条件な」

「もうひとつ?」

「今日は最後まで俺といろ。
あいつがまた連絡して来ても、行かない」

みいなは一瞬だけ迷って――
でも、ちゃんと頷いた。

「……うん」

それは、拓也を断ったときよりも、
ずっとはっきりした「うん」だった。

大地は安心したようにビールを一口飲んで、照れ隠しみたいに言う。

「じゃ、2次会まで付き合うんだから、今日はちゃんと食えよ」

「なにそれ。保護者?」

「いいから」

そんなふうに言い合いながら、
みいなは思った。

(あ……わたし、今までこんなふうに引き止められたこと、なかったかも)

胸の奥が、静かにあたたかくなる。
それが何なのか、まだ名前はつけられないまま。