メイドはご主人様に偽装恋人を依頼する

 ――一年前、




わたしが高校一年生の夏のこと。




 家が破産して、




もう一家全員で首を括るしかない……ってときに理事長先生が助けてくれたのがはじまり。






 お礼がしたくて



「何でもします!」


と頼み込んだわたしに、






奏斗くんが「じゃあ俺専属のメイドになれよ」と言ってくれた。










 最初は渋ってた理事長も、





うちの両親が地方で生活を立て直すまでのあいだの保護ってことで受け入れてくれた。





 ――だから、






わたしと奏斗くんの立場は対等じゃない。


















「……俺より佐藤の方がお似合い……? ふりすら無理…………?」






 さっきまで自信満々だったのに、嘘みたいに声が弱々しい。






 女の子たちの言い分を勘違いしちゃったのかな?




 女の子たちが言いたかったのは






佐藤くんより奏斗くんの方が彼氏価値が高いって言いたかったんだと思う。







彼女価値の低いわたしには奏斗くんが似合わなくて、





佐藤くんの方がつり合いが取れる、と。










 普通に考えて価値が高いと判断された奏斗くんが気にするようなことはないはずなのに、






なぜか彼はしょんぼりしてしまっている。






「……あ! あー!




 僕、そう言えばさっきの授業で分からないところがあったから先生に聞きに行かないといけないんだったー!




 だからもう来栖くんの話を聞いてる時間がないなー!




 ごめんね、




残念だけどそのお願いは蓬莱に聞いてもらってよ!



 じゃあ!」








 普段の佐藤くんからは想像できないほどガタガタと粗暴な音を立てて立ち上がり、







ほとんど逃げるみたいな勢いで教室から出て行った。









 ……佐藤くん、どうしたんだろう?






 なんか恐怖に駆り立てられたホラー映画の登場人物みたいだったなぁ。






 佐藤くんから一方的にわたしの〝おねがい〟を託されることになった奏斗くんは、





まだしょんぼりしたままだった。