「で、誰がロミオ役をやるんだってばさ!」
クラスの教室は、まるで大喜利会場と化していた。
文化祭の演劇「ロミオとジュリエット」で、ヒロインであるジュリエット役に美亜が選ばれたことを知った男子たちが、こぞってロミオ役を狙い始めたのだ。
その様は、まさに「ロミオ役争奪戦」と呼ぶにふさわしかった。しかし、その争奪戦は、いたって平和...いや、ギャグ満載の展開となっていた。
「俺こそがロミオだ!この情熱、この熱意、まさに真実の愛を体現できるのは俺しかいない!」
そう叫んだのは、クラスでも一際目立つ、自称「王子様」こと、直人だった。彼は、今日もお気に入りの鏡を片手に、ポーズを決めている。そのナルシストっぷりは、もはやクラスの定番ネタと化していた。
「はぁ?王子様?直人、自分で自分の顔に酔ってるだけじゃんか。ロミオはもっとワイルドで、俺様って感じじゃなきゃダメなんだよ!」
そう啖呵を切ったのは、クラスのムードメーカー的存在である、体育会系の山田だ。
彼は、いつも元気いっぱいにボールを投げているが、なぜかセリフ回しが時代劇風になってしまう癖強めなキャラだ。
「いや、ロミオはもっと繊細で、詩的な心の持ち主であるべきだ!俺のように、言葉を紡ぐ才能があればこそ、ジュリエットの心を掴めるはずだ!」
次に名乗りを上げたのは、読書好きで、いつも小説を読んでいる内向的な性格の佐藤だった。彼のロミオ像は、どこか文学的で、現実離れしていた。
「えー?ロミオって、なんか、カッコいい感じ?じゃあ、明里もロミオになりたい!!」
「明里はジュリエット役の美亜の親友役でしょ!ってか、そもそも男役だから!」
美亜のツッコミは、もはや教室のBGMと化していた。
彼女は、この茶番劇に、もはやツッコミを入れる気力すら失いかけていた。
クラスの男子たちは、それぞれの個性を活かしたアピール合戦を繰り広げている。
それは、もはやロミオ役を巡る争奪戦というよりは、ギャグの応酬だった。
「俺のダンスを見てくれ!このステップ、ジャンプこのリズム感!ジュリエットはきっと、俺のダンスに魅了されるだろう!」
「いやいや、演技力で勝負だろ!俺のこの悲痛な叫びを聞け!『うあああああ!、ジュリエットぅおぉおお!』...どうだ、感動的だろ?」
「俺は、ロミオが食べたであろう、あの有名なイタリア料理を作って、ジュリエットを誘惑する!」
「それ、ただの食いしん坊アピールだろ!」
美亜は、額に手を当てた。
どうしてこうも、クラスの男子たちは、揃いも揃って、こんなにも個性的なのだろうか。
いや、個性的なのは、自分たちの生徒会メンバーだけではなかったのだ。
演劇の練習は、一体いつになったら、まともに進むのだろうか。



