冬休みを目前に控え、生徒会室には、いつもの喧騒と、それ以上に濃密な空気が流れていた。
期末テストの終了、そして、年末特有の浮かれ気分が、生徒たちの間に広がり始めている。
そんな中、叶美亜の頭を悩ませていた「ピヨちゃんの冬休み中の世話」を巡る騒動は、なんとか解決へと向かっていた。
如月先生の温かい申し出により、ピヨちゃんは冬休み中、彼の自宅で大切に世話されることになった。
「如月先生、本当にありがとうございます。ピヨちゃんのこと、よろしくお願いします」
美亜は、深々と頭を下げた。如月先生は、いつもの穏やかな笑顔で美亜の頭を優しく撫でた。
「大丈夫ですよ、叶さん。私が責任を持って、ピヨちゃんをしっかりお世話しますから」
その光景を偶然目撃していた明里、直人、弘美の三人は、「やはり、美亜ちゃんと如月先生は、ただならぬ関係なのでは...」という疑惑を抱きつつも、ピヨちゃんの世話という極めて平和な真実に、少し拍子抜けした様子だった。
明里は、カエルにつまようじを刺す衝動を抑えながら、「ふーん、ピヨちゃん、如月先生のお家にお泊まりなんだー。いいなぁー」と、どこか羨ましそうに呟いた。
直人は、鏡のない生徒会室で、窓ガラスに映る自分の姿を眺めながら、「ふむ、俺も美亜の心を預かるに相応しい、さらなる高みへと...」と、いつものナルシスト節を披露。
弘美は、「...クエスト、クリア。...次のターゲット、冬休みの予定。...確認、必要」と、クールに呟き、スマートフォンの画面をタップしていた。
生徒会室の時計の針が、カチカチと、冬休みへと向かっていく時間を刻んでいる。
美亜は、ピヨちゃんの世話の心配から解放され、少しだけホッとしていた。
しかし、彼女の周囲には、相変わらず、予測不能な出来事が次々と巻き起こる。
"如月先生への淡い恋心"
それは、美亜自身もまだ自覚していない、ほんの小さな灯火だった。
普段はツッコミ担当の彼女も、如月先生のこととなると、少しだけ言葉を詰まらせてしまう。
その様子を、直人は「俺への嫉妬か?」と都合よく解釈し、さらにナルシストな行動をエスカレートさせていく。
「美亜、俺の輝きを見よ!この嫉妬すらも、俺の魅力へと昇華させるこの力こそが、君を虜にする!」
明里の突拍子もないボケは、もはや日常の一部だ。
「ねぇ、美亜ちゃん!カエルって冬眠する時、どんな夢を見るんだろう?もしかして、おいしい虫がいっぱい出てくる夢とかかな?!」
彼女の奇想天外な想像力は、美亜をいつも困惑させる。
弘美のゲーマー魂は、時折、生徒会室をゲームの世界へと変貌させる。
「...この資料の山、まるで、ダンジョン攻略だ。...ボスは、期末レポートか?...よし、アイテム(ノート)を駆使して、クリアするぞ!」
美亜は、そんな個性豊かな生徒会メンバーに囲まれながら、この騒がしい日常が、何よりも大切だと感じていた。
ピヨちゃんの世話という小さな悩みから始まった、生徒会メンバーの勘違いとドタバタ劇。
それは、彼らの友情を、そして、ほんの少しの淡い恋模様を、さらに深めていくための、大切な「日常」の一部だったのだ。
窓の外では、空に一番星が輝き始めていた。
冬休みは、もうすぐ、そこまで来ていた。
生徒会室には、温かい笑い声が、響いていた。
それは、この生徒会の終わらない物語であり、ほんの序章に過ぎなかった。



