もう一度、好きになってもいいですか?

スマホの画面を見つめたまま、私は固まっていた。
 画面の一番上に光る通知。

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aoiblue._.07:美咲って彼氏いるの?

 ̄ ̄ ̄
 ……え?
 久しぶりの連絡が、これ……?

 小学校の頃、毎日のように遊んでいた幼馴染。
中学卒業まで、なんだかんだで一緒だった幼馴染。
 
 鼓碧。——碧。

 高校は違う学校に受験し、今ではまるで違う世界の人
 みたいになっていた。

それなのに、急にこんなメッセージを送ってくるなんて。

「……勘違いしちゃうじゃん」


胸のドキドキをおさえ、なんとか文章を打つ。

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saki._.days:いきなりすぎでしょ、びっくりしたよ

 ̄ ̄ ̄

 すぐに既読がついた。心臓が跳ねる。
 まるで待っていたみたいに。

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aoiblue._.07:だって気になったからさ
aoiblue._.07:あの美咲に彼氏できてたらニュースだろ笑

 ̄ ̄ ̄

「ニュースって……」


 思わず笑みがこぼれる。
子どもの頃から変わらない、ちょっと大げさで、人を笑わせる碧らしい言い方。
でも、その明るさに懐かしさが混じって、胸がじんわり温かくなる。

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saki._.days:彼氏なんていないよ
saki._.days:碧こそ、そういうのどうなの?
aoiblue._.07:俺?モテすぎて困ってる

 ̄ ̄ ̄
「嘘!?」
 あきれるふりをしながらも、笑いが止まらない。
 そうやって冗談ばかり言うところも、昔と全然変わってない。

 でも、本当に困ってるわけじゃないって知ってる。
 小学生のころから一番近くで見てきたから。
 碧は、いつもみんなの中心にいて。
 でも、大事なときには必ず支えてくれた。

 運動会のリレーでバトンを落とし、順位を下げてちゃったけど、全力でフォローし、一位にしてくれたこと。
 雨の日に二人で走って帰って、びしょ濡れになりながら笑い合ったこと。

 あの時の笑顔がふっと蘇って、胸が熱くなる。

「……ずるいな」

 思わずつぶやく。
 懐かしい気持ちが、心の奥からあふれ出して止まらない。
中々既読がつかず、画面を握りしめる手に力が入る。
ようやく返ってきたメッセージを見て、息が止まった。

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aoiblue._.07:なぁ美咲。今度の土曜、会えない?

 ̄ ̄ ̄


「……え」


 思わず声がもれる。
 会う……? 私と?
 何年も会ってないのに……?
けれど、その軽やかな誘い方が、あまりにも碧らしくて。
 胸が苦しいほど高鳴って、指が震える。
 でも、心の奥底でずっと——会いたいって思ってた。

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saki._.days:……いいよ。どこで会う?
aoiblue._.07:昔の公園。覚えてる?
 ̄ ̄ ̄

 目の奥がじんと熱くなる。
 覚えてるに決まってる。
 滑り台のペンキが剥がれかけた、あの小さな公園。
 夕方まで遊んで、夏の夜には線香花火をした。
 あのベンチで、夢を語り合った。
 碧も覚えていてくれたなんて……


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saki._.days:うん。ちゃんと覚えてる
aoiblue._.07:じゃあ決まり。土曜の夕方な。
遅刻するなよ、美咲。
 ̄ ̄ ̄

 最後の一文に、思わず笑ってしまう。
 昔からずっと、碧に言われてきた言葉。
 「美咲はすぐギリギリに来るんだから」って。
 スマホを胸に抱きしめて、ベッドにごろんと横になる。
 涙がにじむ。どうしてこんなに泣きそうなんだろう。
 また会えるんだ。
 大切だった幼馴染に。
 胸の奥が、くすぐったくて、苦しくて、愛しい。

でも、今の私を見たらがっかりするんじゃないかって不安もある。
だって、高校生になって、私は変わった。
いい意味でも、悪い意味でも。

ねぇ……碧。

また、私の前で笑ってくれる?