もう一度、好きになってもいいですか?

修学旅行から戻って数週間。

頭の中には、あの夜の美咲の顔が何度も浮かんでくる。

色々口走ったのを思い出して、ひとりで布団の中でバタバタしたり。

(……やっべぇ。どう考えても、もう後戻りできねぇ)

そう思いながらスマホのカレンダーを見る。

体育祭まであと5日。

……告白する日まで、あと5日。

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そして迎えた体育祭。

男子校の体育祭は、とにかくうるさい。

競技の合間には変な応援歌が飛び交うし、誰かが転んだだけで腹を抱えて大爆笑。

俺もその真ん中で、いつものようにふざけながら声を張り上げていた。


「おい! ちゃんと走れよ、カメかよお前!」

「碧、お前が次走るんだからな!」

「まっかせとけ、俺がぶっちぎってやる!」


 普通なら悪口に捉えられる発言さえも、笑いに捉えられ、瞬時に笑いが飛び交う。

こうやってみんなと騒いでると、男子校も悪くないと思う。

 でも、その日。

グラウンドに響いた声援で、心臓がひっくり返った。


「碧ーーー!! がんばれーー!!」


 女子の声。しかも、聞き覚えのある声。
反射的にスタンドを見上げると――いた。
涼しげな水色のロングワンピース姿に、ゆるく巻いた茶髪、そして白色の麦わら帽子。
いつもポニーテールにしている髪を、今日はおろしている。
太陽の下で笑っている、美咲。

(……ちょ、美咲!?)

 一瞬で顔が熱くなる。
そりゃ、俺がインステに体育祭のこと書いたし、来てもらわなきゃとは思ってたんだけど、いざ会うと恥ずかしい…!!

 案の定、周りはすぐにざわついた。

「おい、マジで女子いるぞ!」

「え、誰? なんでウチの体育祭に?」

「……あれ、碧に手振ってね?」

「あれ、修学旅行の時の高坂美咲さん!?」

「もしかして彼女かよ、チクショ〜!!」

 あっという間に、俺に視線が集まる。
心臓がうるさすぎて爆発しそうだ。

「ち、ちげーし!」

「でも顔真っ赤だぞ!」

「なぁなぁ、碧の彼女だろ? 教えろよ!」

「彼女じゃねぇし…!!」

 叫んだ瞬間、グラウンド中に爆笑が起きた。
仲間が背中をバシバシ叩いてくる。


「おいおい、照れ隠しか〜?」

「碧が真っ赤になるの初めて見た!」

「やっぱ学校一のイケメンも恋には弱いな~!」

 ……もう、穴があったら入りてぇ。

 リレーが始まる。
バトンを受け取る瞬間、美咲の声がまた響いた。

「碧ーーー! ファイト!」

(……見てろよ、美咲!)


 全力で走った。

男子校の意地とか、クラスの勝敗とか、そんなもんより――ただ彼女にかっこいいとこを見せたくて。

 必死に走り抜けて、バトンをつないだとき、肺が焼けるほど苦しいのに、不思議と心は軽かった。

 競技が終わって、観客席に駆け寄る。

美咲が両手で拍手して、目を輝かせていた。

「すっごい速かった!
碧、めちゃくちゃかっこよかったよ」

「……あったりめーだろ。
美咲が見てんのに、ダサい走りできっかよ」

 そう言った瞬間、周囲から「おおおーーー!」って歓声が上がった。

野次も混じる。

「公開きたぁぁ!」

「祝辞は俺やるからな、絶対呼べよ!」

「美咲さーん! 碧の面倒見てやってくださーい!」

「だぁーー!うるせぇ!!」

 また大爆笑が起きる。

俺の顔はたぶん真っ赤で、心臓はうるさいくらい鳴ってた。

でも――後悔なんて少しもなかった。



(美咲。もう隠す気なんてないからな。
……お前は、美咲は、俺にとってずっと、ずっと、特別なんだから)