もう一度、好きになってもいいですか?

京都の空は思ったよりも青くて、どこを切り取っても絵になる。

昼下がりの清水坂は、観光客でごった返していた。
カラフルな浴衣姿の人たちの間で、心葉と私はレンタルした浴衣を着て歩いていた。

私は碧色、心葉は薄緑色の浴衣だ。

「美咲、本当に似合ってる」

 心葉が小さな声で微笑む。

「いや、心葉こそ!悠翔くん、見惚れてるじゃん」

 私はからかうように囁いた。すると心葉は慌てて首を振り、顔を赤らめる。

その初々しい仕草に、少し笑ってしまった。
  
清水寺へ向かう途中の石畳の路地。
古い町屋と赤い提灯が並んでいて、観光客でにぎわっている。

「美咲、ここ映えスポットで有名だよ!」

中には外国人観光客もたくさんいて、彼方此方から母国語で話す声が空気に溶けていった。


「確かに、写真撮ろう!」


私たちは足を止めて、心葉と悠翔が並んで照れている姿を後ろに入れながらシャッターを切った。

……もちろん、ちゃっかり自分もフレームに入れて。

すぐにその写真をインステに投稿する。
…碧も見てくれないかな、なんて淡い期待を寄せて。

_____

saki._.days
✨京都・清水坂✨

やっぱり雰囲気が最高すぎる。
浴衣と風景バッチリだし、京都最強!
抹茶も食べたいなぁ💭

(#修学旅行 #清水坂 #映えスポット #友だちと)

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
いいね!が一瞬で増えていく。
コメント欄も「かわいい!」「場所どこ?」「浴衣似合ってる!」で埋まっていく。

(ふふ、やっぱり京都は映えるなぁ)

……碧のアカウントの通知が響いた。

_____

aoiblue._.07

✈️京都旅行✈️

抹茶うめぇ✨

(#京都 #清水坂 #抹茶 #修学旅行)

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「えっ……」

思わず声が漏れた。

「なに?どうしたの?」と心葉が覗き込むけれど、私は画面から目が離せない。

(碧……本当に来てるの!?同じ坂に……?)

胸が早鐘のように打ち始める。

と、そのとき——。


「おーい、碧!早くしろよ!」


人混みの向こうから、男子たちの声が聞こえてきた。

振り向けば、碧の班の男子数人がソフトクリーム片手に歩いてくる。

その真ん中に、碧。
 目が合った瞬間、碧の動きが止まった。


「……美咲?」


 その声に、班の男子たちが一斉にざわつく。

「え、誰!?めっちゃ可愛いんだけど!」

「浴衣似合いすぎ!観光雑誌の表紙かよ!」

「碧、まさかの彼女?」

「ち、違っ……」慌てて否定しようとしたけど、碧がそれより先に口を開いた。

「俺の大事な幼馴染だから」

 いつにも増して、真剣な声。
それだけで、心臓が跳ねた。


「うっわ!一番強いワードきた!」

「おい碧、顔真っ赤だぞ!」

「うるせえっ」

「羨ましすぎる〜」

 男子たちは大盛り上がり。 
私はどうしていいかわからなくて、浴衣の袖をぎゅっと握った。

(……やめてよ。そんなふうに言われたら、余計に意識しちゃうじゃん)

 碧はちらっと私を見て、苦笑しながらも隣に並んで歩き出す。
その距離は自然と近くて、袖同士がかすかに触れそうだった。

 横で心葉と悠翔が、「おぉ…」と感心したように見守っている。

心葉なんて、小声で「やっぱり美咲と碧って……」なんて呟いているのが聞こえて、顔から火が出そうだった。

 昼間の光が浴衣の柄を鮮やかに照らす。

その眩しさの中で、碧と並んで歩いているだけで、胸が甘く満たされていった。