もう一度、好きになってもいいですか?

お母さんに本音をぶつけてから、日々は慌ただしく過ぎていった。
テスト勉強に追われたり、修学旅行の準備に追われたり。
気づけば、必然的に碧に会う時間なんてほとんどなくなっていった。

(碧も同じ学校だったら、毎日会えたのに……)

ふと窓の外を眺めてため息をついたとき。

「あーあ、碧くんと同じ学校なら良かったのに…なんて顔してるね、美咲」


隣から心葉の声。
まるで心を読まれたみたいで、思わず肩をびくっとさせる。


「えっ、なに……!?」

「ふふ、図星でしょ」


にやりと笑う心葉に、私は慌てて手を振った。


「ちょっと、からかわないでよ!」


その瞬間、前の方から先生の低い声が飛んできた。


「おい、そこ!静かにしろ!……そんな緩んでたら修学旅行なんて行けないぞ?」


教室が一瞬しんとしたあと、先生はどさっとプリントの束を机に置いた。


「はい、これが修学旅行のしおりだ。なくすなよー!」


ざわめきが一気に広がる。


「京都だって!やば!」

「お土産リスト作っとかなきゃ」

「班行動どうする?」

「舞妓さんに会えるかな〜」


机の上でしおりを開きながら、胸が少し高鳴った。

まだ碧に会えない寂しさは残ってるけど、修学旅行は確かに近づいている。

(もしかしたら……会えるのかな)

胸の奥が、ほんの少しだけ熱くなる。

 先生の声に、教室中が一気にざわついた。

「金閣寺にー、抹茶にー、団子にー、ソフトクリームにー、」

「お前全部食べもんじゃん!」

「お土産は八つ橋でしょ!」

 あちこちから笑い声が飛び交う。
 私も手元のしおりを開きながら、胸が少し弾んでいた。

(修学旅行……いよいよだ)

「美咲〜!一緒に班入ろ!」

 前の席の心葉が振り返ってきて、にこっと笑う。


「もちろん!」

「よかったぁ!じゃあ……あと一人どうする?」

「え?悠翔くんさそうでしょ?」

「えっ」


 そこへ悠翔くんが「俺はもいい?」と加わってきて、自然に班は決まっていった。
まったく、初だなぁ。

「自由行動は清水寺と嵐山あたり行きたいなぁ」

「嵐山いいね!竹林で写真撮ろ!」

 話はどんどん盛り上がる。
 地図を広げて、赤ペンでルートを書き込んでいく作業は、ちょっとした遠足前の作戦会議みたいだった。

◆休み時間

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saki._.days
修学旅行の班、決まったよ!京都いくんだ〜

 ̄ ̄ ̄ ̄

aoiblue._.07
え、マジで!?俺も京都行くんだけど!

 ̄ ̄ ̄ ̄

「うそ…!」

自然に口許が緩む。

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saki._.days
偶然すぎない!?笑
会えるかな?
……でも人多いだろうし、会えないかな

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

aoiblue._.07
いや、俺は絶対見つける✌️

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

saki._.days
かっこつけすぎ(笑)

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
aoiblue._.07
じゃあ賭けな?
俺が見つけられたら、美咲は俺にお土産買ってきて!

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

saki._.days
えぇ!?ずるい!
じゃあ私が先に見つけたら、碧が私の分!

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
aoiblue._.07
よっしゃ勝負🔥

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

(……当日、本当に会えたらいいな)
スマホを閉じた瞬間、心臓がくすぐったく跳ねる。

◆放課後

 心葉と文房具屋さんに寄って、しおり用にマーカーを買った。

「悠翔くんと一緒に、デートスポット行かなくていいの?」

「え、えっと……」

 心葉は赤くなってもじもじ。


「……考えてはないかな。
 美咲も一緒行くことになるし、迷惑でしょ?」

「そんなことないよ〜!
私は違う班に入れてもらうから、ほらメールしなって!」

 私がからかうと、心葉はさらに顔を覆って「もうっ!」と笑った。

 帰り道、紙袋を抱えながら空を見上げる。

(碧と同じ場所にいるんだ……それだけで、特別な修学旅行になる気がするな)

思考がどんどん碧でいっぱいになっている私に、苦笑した。