そんな日々が7つ、8つ、続いた。
ある夜、彼女は僕に、「今何してるの?」と聞いてきた。
「恋文を書いている」
「恋文?」
「そう、恋文」
無論、僕は小説を書いていた。話の内容は、もちろん、彼女をモデルにした女と、僕をモデルにした男が出会う、ボーイ・ミーツ・ガールだった。僕は彼女を、小説の中で躍動させた。僕に対する普段の彼女は、不器用で、不愛想で、野良猫のようだったが、小説の中の彼女は、彼女の持っている魅力を存分に出した。シロツメクサをいじる彼女は、できるだけ明るく、子供に優しい感じで書いたし、登場する僕を模した男に対しても、笑顔を振りまく、明るい女性として書いた。彼女の家で、カレーを食べている時、彼女は僕にさほど興味を示さず、かと言って、自分語りをすることもなく、テレビから流れてくるお笑い番組の話をするだけだったが、小説の中の彼女は、僕のことを少しでも多く知ろうと、頑張っている感じに書いた。あったことをそのまま書いた方が、僕としては魅力的に思えたのだが、それではただの、壮大な日記でしかなく、もはや小説とは呼べない代物になる。
とどのつまり、僕は、その壮大な日記を書きたかっただけなのかもしれない。でも、そこに振り切れないところが、こうして小説を書いている理由にもなっている。



