「そう、やっぱり、そうなの」と彼女はまたベンチに座って、2本目の煙草に火をつけた。


「でも私、悪いけど、恋はできないから。誰かと付き合って、ドライブに行ったり、クリスマスに一緒にケーキを食べたり。そういうことができないの。ううん、したくないの。そんな普遍的な恋は」


今の一言で、僕は少し彼女を疑った。ちょっと嫌いになったという表現が一番わかりやすいかもしれない。


「普遍的を悪いように言うのは違うと思います」


「別に悪くは言ってないよ。ただ、もっとこう、情熱溢るる、そういう恋がしたい」


「ゲレンデが溶けるほどの、ですか?」と僕は少し嘲笑して言った。


「斬新が好きな子って、結構いますよね。でもその大半は他人よがりで、自分は何もしない。どこに行きたい、何が食べたい、自分では言わず、なんでもいいで済ませる。面白い人が好きって言う人に多いですかね、そういう人。要するにいい女ぶってるだけなんですよ。これは、男がするのが当たり前とか、彼氏ならこう在るべきとか、自分の価値観を押し付け、期待に胸膨らませて。それに応えられないと、たちまち不機嫌になる。僕が一番嫌いなタイプの女です、それ」


「じゃあ、キミはどうだって言うの? 自分は周りとは違うとか思い上がっちゃってる、棚上げナルシスト野郎じゃないの? いるんだ、そういう男。『俺はほかの男とは違うから』とか言いながら、結局周りと同じように下心、性欲を満たすために、ち密で小賢しいご機嫌取りをする。それで自分の思い通りに事が進むと、さも釣ってやったかのような振る舞いで、優位に立とうとする。恋をミッションと捉えて、クリアすると途端に冷めるし、冷たく当たる。私が一番嫌いタイプの男よ」


「喧嘩売ってるんですか?」


「キミが最初に吹っ掛けてきたんじゃない」