彼女は煙草の火を消し、立ち上がったと同時に、伸びをした。「んっ!」と漏れた声、それすらも愛おしい。しかし、この声で僕ははっきりと言われた。僕に、嫌われるため。しかし、僕は不思議と動じなかった。
「僕のことが嫌いなんですか?」
「嫌いではない」
「嫌いではない、ですか」
「キミは、私のことをどう思ってる?」
「好きです。正直」
僕は至極自然にそう言えた。自分でも驚くほどだった。僕は恋愛をするとき、いつも自分から告白してきた。成功することも、断られることもあった。その都度、僕は神経をすり減らし、成功したときのことを考えながら、勇気を振り絞った。役者じみていたし、文学じみてもいた。それはきっと心の中にある気持ちを、そのまま表現しなかったからだと思う。どこか仮面をかぶって、よく見せよう、よく見てもらおうとしていた。だから、相手にも純粋な気持ちは伝わらないし、仮に伝わっても、何かの拍子で催眠が解けたみたいに、たちまち、冷めてしまうのだ。
僕は今日、魔法を使わなかった。生身で飛び込んだ。不思議な勇気だ。



