彼女の吐いた紫煙は、まるで天に昇る龍を思わせる。神聖な風を身にまとい、虚像を作り出す。天高く登った龍は、わずか、漂い、姿を消す。彼女はスタンド灰皿に灰を落とす。しゅっという音が、耳障りよく辺りを満たす。匂いは大人。吸わない僕にとって、煙草の匂いは、頭に集るハエのように鬱陶しく、ストレスを溜めるものでしかなかった。しかし、彼女の灰を通った紫煙は、不思議と嫌じゃなかった。こんなものでも浄化してしまう、そんな風なことを思った。


「神社で吸う煙草って、なんだか悪いことしてるみたいで、あまり気持ちのいいものじゃないの。でもそういう悪いことって、たまにしたくなるでしょ?」


「それって、ご飯を手で食べるみたいなことですか?」


「ぴったりな例えだね。まさにそう。今の私は何も満たされていないし、むしろ居心地の悪さを感じているまである」


「それなのに吸うんですね」


「どうしてだと思う?」


僕は足を組みながら、考えた。これは何か、愛だとか、恋だとか、そういうものでは言い表せない、遠回しな福音的な問いなのだろうか、とも。しかし僕の想像は浅はかで、能天気なものだった。彼女は全く違うことを考えていた。


「キミに嫌われるためにやってるの」