婚活アプリで出会った人が運命の人だった

高層ビルの会議室。
10名ほどの男女が長方形のテーブルを囲んでいた。
ホワイトボードの前で1人が発表をしている。
高杉直仁は、眠気と戦いながら発表者の話を聞いていた。
テーブルの上には、すでに空になったコーヒーの缶が3本並んでいる。

『えっと、質問は僕の仕事のことだったよね？』

頭の中で、昨夜送ったメッセージを思い出す。

『仕事はイベントのプランニングをする仕事をしているよ。これだけ聞くと面白そうってよく言われるけど、毎日会議ばかりで眠たい』

隣に座っている男が、ちらりと高杉を見た。
高杉は慌てて姿勢を正し、4本目のコーヒーに手を伸ばす。

『コーヒーばかり飲んでるよ。歯が茶色くなっちゃう』

苦笑いが漏れそうになるのを、高杉は必死で堪えた。
外側だけ見るとポーカーフェイスの男である。
高杉直仁、30歳、株式会社若葉プランニングの社長だ。
スマホに音もなくメッセージを知らせる通知が来た。
高杉は仕事の連絡が来たかのようなふりをして手帳を確認しながら返信文を書いた。