婚活アプリで出会った人が運命の人だった

恵のマンションではお風呂から上がった恵がタオルで髪を拭きながらリビングに戻った。
ソファに置きっぱなしにしていたスマートフォンが目に入る。

「もう連絡は来ないよね……」

小さく呟きながら、スマートフォンを手に取った。
画面を点けた瞬間、恵は固まった。

『Tさんからメッセージが届いています』

「え……」

慌てて婚活アプリを開く。

『今日は会えなくて残念でした』

恵の心臓が跳ね上がった。

「どうして……」

手が震える。

(なんで……? 私、すっぽかしたのに……)

恵はソファに座り込んだ。
頭が混乱する。
メッセージをもう一度読む。

『今日は会えなくて残念でした』

シンプルな文章。
責める言葉は一切ない。
指が震えながら、返信を打ち始める。

『ごめんなさい』

でも、送信する前に消した。

『仕事で行けなくなって』

これも消す。

何を書いても、嘘になる。
恵はスマートフォンを握りしめた。
濡れた髪から、水滴が頬を伝った。

「私……最低だ」

小さく呟く。
高杉の優しいメッセージが、余計に胸に刺さった。
恵は深呼吸をして、ゆっくりと文字を打った。

『本当にごめんなさい。急に怖くなって、行けませんでした』

正直に書いた。
嘘はつけない。
送信ボタンに指を置く。

「これを送ったら……」

恵は目を閉じた。

(もう、Tさんとは終わりかもしれない)

「いや、どちらにしても30分も待たせたんだ。とっくに嫌われてる」

恵は送信ボタンを押した。

しばらくぼーっとしているとピコンと音がした。
恵は驚いてスマートフォンを見た。
返信が来ている。

『大丈夫ですよ。無理しなくていいです。Iさんのペースで』

恵の目に涙が滲んだ。

「なんで……こんなに優しいの……」

恵はスマートフォンを胸に抱きしめた。
でも、この人はあの高杉直仁。
その日の夜、恵の心は、揺れ続けて、それ以上、返信できなかった。