婚活アプリで出会った人が運命の人だった

高級マンション。
都心を見下ろす高層階の一室。
高杉の自宅は、シンプルで洗練されたインテリアで統一されていた。
ドアを開けて入ると、高杉はネクタイを緩めながらリビングに向かった。
ソファに座り込み、スマートフォンを取り出す。
婚活アプリを開いた。
高杉は小さく笑った。
画面には、恵の加工された写真が表示されている。
高杉は自分が撮った写真フォルダを開いた。
そこには、イベント会場で恵が新郎新婦に説明している様子を遠くから撮った写真があった。
真剣な表情。
一生懸命に話している姿。
高杉は写真と、婚活アプリのIさんのプロフィールを見比べた。

「全然ちがうじゃないか」

高杉はソファに背中を預けた。
新宿駅で柱の陰に隠れていた恵の姿を思い出す。
あんなに必死に隠れて。
思い出すだけで笑みがこぼれた。
高杉はすぐに気づいていた。
恵が自分を見つめる視線。
スマートフォンを覗き込む仕草。
そして、婚活アプリの画面がちらりと見えた瞬間。
30分、高杉は待った。
恵が出てくるかどうか。
でも恵は姿を現さなかった。

「しばらく楽しめそうなオモチャができたな」

きっと今も、罪悪感でいっぱいなんだろう。
スマートフォンに指を滑らせ、メッセージを打ち始める。

『今日は会えなくて残念でした』

送信ボタンを押し、スマホをテーブルに置くとワイシャツのボタンを外しながら洗面所に向かった。