婚活アプリで出会った人が運命の人だった


翌朝。
神谷映像株式会社の制作部。
恵はパソコンで女性の写真をスリムに加工していた。
キーボードを強く叩く。

「別に!」

エンターキーを強く叩く。

「何も!」

アリサが恵をチラチラと見ている。

「恵さん、何かありました?」
「別に何もない」

恵がまたキーボードを叩いた。
美咲が部屋に入ってきた。

「来週のスケジュール置いておくね」
「あ、美咲さん、私、来週行かない」
「え?ま、まって……行かない?」

美咲が驚いた顔をする。
恵がターンとエンターキーを押してくるっと椅子を回して美咲を見た。

「そう、行かない」
「ちょっと待ってよ、無理よ。人数足りないんだから」
「これって参加自由って聞いたけど?」
「そうだけど、恵がいないと困るわ
「私がいなくても大丈夫よ。こんな仕事、誰だってできる」

恵が吐き捨てるように言った。
美咲の表情が曇る。

「ちょっと、恵!」

恵はしまったという顔になった。

「ごめんなさい、そういうつもりじゃ――」
「あなたが接客業、舐めてることがよくわかった。もういい」

美咲が怒って立ち去る。

「違うの、美咲さん」

恵が追いかけようとしたが、美咲はもう行ってしまった。

アリサが心配そうに恵を見ている。

「恵さん……」
「ごめん。最近の私、どうかしてる」

恵は小さく呟いた。
するとアリサは恵の肩に手を置いて

「恵さんはずっと、こうですよ」

悪気はないのだろうけどムッとした。