アラームが鳴り響いた。
飯村恵は、ベッドから手を伸ばしてスマートフォンを手探りで探した。
ようやく画面に触れアラームを止める。
32歳の朝は、いつもこうして始まるのだ。
勢いよく上半身を起こすと、カーテンを開け放った。
太陽の光が部屋いっぱいに差し込んでくる。
恵は窓辺に立ち、大きく伸びをした。
キッチンで電気ポットに水を入れ、スイッチをポンと押した。
鼻歌まじりに、小走りでリビングへ。
ソファに座り込むと、スマートフォンを手に取る。
深呼吸を一つ。少し震える指で画面をタップした。
『婚活アプリピュア』
タイトルの下には、微笑み合う男女のイラストが表示されている。
恵は唇を噛んで、画面を見つめた。
『メッセージが1件』
「来てる!」
思わず声が出た。
ソファの上で飛び跳ねる。
こんなことで喜ぶのは久しぶりの感覚だった。
お湯が沸いた知らせをポコッという音で聞いた。
慌ててキッチンに走り、コップにお湯を注いでリビングに戻る。
スマートフォンは握りしめたまま離さない。
テーブルに白湯の入ったコップを置くと、恵は再び画面をタップした。
長文のメッセージが表示される。
『Iさん、こんばんは。いつも返信が2時過ぎになってしまい、申し訳ない』
恵の口元がにやりと緩む。
「いえいえ、とんでもない」
答える人はいない。
それでも恵は画面に向かって話しかけずにはいられなかった。
『最近、大きな仕事が控えていて、その準備で帰りが遅くなってしまうんです。本当はもっとIさんとやり取りをしたいんだけど』
恵は天井を見上げ、足をバタバタとさせた。
まるで恋する少女のように。
いや、恋しているのかもしれない。
会ったこともない、顔も知らない相手に――。
馬鹿みたいだと、自分でも思う。でも、止められない。
『歯が茶色くなっちゃう』
という最後に送られた文章にふふっと自分でも気持ち悪い声が出た。
飯村恵は、ベッドから手を伸ばしてスマートフォンを手探りで探した。
ようやく画面に触れアラームを止める。
32歳の朝は、いつもこうして始まるのだ。
勢いよく上半身を起こすと、カーテンを開け放った。
太陽の光が部屋いっぱいに差し込んでくる。
恵は窓辺に立ち、大きく伸びをした。
キッチンで電気ポットに水を入れ、スイッチをポンと押した。
鼻歌まじりに、小走りでリビングへ。
ソファに座り込むと、スマートフォンを手に取る。
深呼吸を一つ。少し震える指で画面をタップした。
『婚活アプリピュア』
タイトルの下には、微笑み合う男女のイラストが表示されている。
恵は唇を噛んで、画面を見つめた。
『メッセージが1件』
「来てる!」
思わず声が出た。
ソファの上で飛び跳ねる。
こんなことで喜ぶのは久しぶりの感覚だった。
お湯が沸いた知らせをポコッという音で聞いた。
慌ててキッチンに走り、コップにお湯を注いでリビングに戻る。
スマートフォンは握りしめたまま離さない。
テーブルに白湯の入ったコップを置くと、恵は再び画面をタップした。
長文のメッセージが表示される。
『Iさん、こんばんは。いつも返信が2時過ぎになってしまい、申し訳ない』
恵の口元がにやりと緩む。
「いえいえ、とんでもない」
答える人はいない。
それでも恵は画面に向かって話しかけずにはいられなかった。
『最近、大きな仕事が控えていて、その準備で帰りが遅くなってしまうんです。本当はもっとIさんとやり取りをしたいんだけど』
恵は天井を見上げ、足をバタバタとさせた。
まるで恋する少女のように。
いや、恋しているのかもしれない。
会ったこともない、顔も知らない相手に――。
馬鹿みたいだと、自分でも思う。でも、止められない。
『歯が茶色くなっちゃう』
という最後に送られた文章にふふっと自分でも気持ち悪い声が出た。
