そう告げると、男性はまた口を固く閉ざした。眉間に皺が寄っている……もしかして、先ほどアダン様を私が見返したので、気分を損ねてしまっただろうか。
縮こまり、肩を震わせていると、もう一人の片眼鏡の男性が声をかけて来た。
「アダン様、眉間に皺が寄っておりますよ……女性を威圧するなと何度言ったら分かるのですか?」
「いや、威圧など――」
アダン様の言葉に片眼鏡の男性が被せるように捲し立てる。
「それでしたら、眉間を揉んで下さい! ああ、失礼致しました。私はレナート、アダン様の執事でございます」
優雅な動作で一礼を執るレナートさん。彼は後ろで素直に眉間に指を押し付けているアダン様を一瞥してから、私へと向き直った。
「ここはネレイダ王国と呼ばれています。地上では『女神の泉』と呼ぶのでしたか……? その泉の深淵に造られている国でございます」
「泉の……深淵ですか?」
「はい。水底でございます」
私はレナートさんの言葉に耳を疑った。……彼はここが泉の中だというのだ。先程泉に身を投げた時、確かに息ができずに気を失ったはずなのだが……。
それに私は飛び込む前に泉を覗き込んだけれど、街があるようには見えなかった。この部屋のように明かりを灯しているのであれば、水底でも光らしきものが見えたと思うのだけれど。
私の思考を読んだのか、レナートさんは話を続ける。
「ネレイダ王国は水の女神様によって造られ、加護を与えられております。そのため、地上から見ることはできません」
水の女神様――確か女神デューデ様と仰ったはず。我が国で崇められている女神様だ。
今は亡き母が以前、おとぎ話を読んでくれたことがある。その時に「女神様のお名前はデューデ様と仰るのよ」と言っていたことを思い出した。
「息ができるのは……」
「こちらは魔道具によるものでございます。この国では水の女神様の加護がございますので、魔術と呼ばれるものが使用できます。そのため、私共は魔道具を使用してこの空間を快適に過ごせるよう尽力しております」
魔術……聞いたことがない。首を傾げていると、アダン様が手のひらを天井へと向けた。
すると――。
手のひらの上にいつの間にか硬貨ほどの大きさの球体ができている。その球は透き通っていて、奥を見通せるほどだ。
すると、その球の周囲に何かが集まり……段々と大きくなっていく。私が呆然としている間に、拳より一回りほど大きくなっていた。
「これは……?」
「水を生成して手の上に集めてみた。これが魔術だ」
水を生成……作り出す、ということだろうか。私はまじまじと手の上にある水の球体を見つめた。
公爵家の者達がこんなものを使えるだなんて聞いたことがない……使えるなら、むしろ嬉々として私を苦しめるのに使用しそうよね。
不思議そうな表情で球体を見ていたからだろう。アダン様は私を見てポツリと呟いた。
「そうか、地上ではもう魔術が使えないのだな……」
哀愁が漂う声色。私はアダン様へ声がけを試みるが……どうすれば良いのか分からずまごついてしまう。狼狽えている私を見兼ねたのか、レナートさんは「落ち着いたら魔道具のある場所へとご案内しましょう」と提案してくれた。
縮こまり、肩を震わせていると、もう一人の片眼鏡の男性が声をかけて来た。
「アダン様、眉間に皺が寄っておりますよ……女性を威圧するなと何度言ったら分かるのですか?」
「いや、威圧など――」
アダン様の言葉に片眼鏡の男性が被せるように捲し立てる。
「それでしたら、眉間を揉んで下さい! ああ、失礼致しました。私はレナート、アダン様の執事でございます」
優雅な動作で一礼を執るレナートさん。彼は後ろで素直に眉間に指を押し付けているアダン様を一瞥してから、私へと向き直った。
「ここはネレイダ王国と呼ばれています。地上では『女神の泉』と呼ぶのでしたか……? その泉の深淵に造られている国でございます」
「泉の……深淵ですか?」
「はい。水底でございます」
私はレナートさんの言葉に耳を疑った。……彼はここが泉の中だというのだ。先程泉に身を投げた時、確かに息ができずに気を失ったはずなのだが……。
それに私は飛び込む前に泉を覗き込んだけれど、街があるようには見えなかった。この部屋のように明かりを灯しているのであれば、水底でも光らしきものが見えたと思うのだけれど。
私の思考を読んだのか、レナートさんは話を続ける。
「ネレイダ王国は水の女神様によって造られ、加護を与えられております。そのため、地上から見ることはできません」
水の女神様――確か女神デューデ様と仰ったはず。我が国で崇められている女神様だ。
今は亡き母が以前、おとぎ話を読んでくれたことがある。その時に「女神様のお名前はデューデ様と仰るのよ」と言っていたことを思い出した。
「息ができるのは……」
「こちらは魔道具によるものでございます。この国では水の女神様の加護がございますので、魔術と呼ばれるものが使用できます。そのため、私共は魔道具を使用してこの空間を快適に過ごせるよう尽力しております」
魔術……聞いたことがない。首を傾げていると、アダン様が手のひらを天井へと向けた。
すると――。
手のひらの上にいつの間にか硬貨ほどの大きさの球体ができている。その球は透き通っていて、奥を見通せるほどだ。
すると、その球の周囲に何かが集まり……段々と大きくなっていく。私が呆然としている間に、拳より一回りほど大きくなっていた。
「これは……?」
「水を生成して手の上に集めてみた。これが魔術だ」
水を生成……作り出す、ということだろうか。私はまじまじと手の上にある水の球体を見つめた。
公爵家の者達がこんなものを使えるだなんて聞いたことがない……使えるなら、むしろ嬉々として私を苦しめるのに使用しそうよね。
不思議そうな表情で球体を見ていたからだろう。アダン様は私を見てポツリと呟いた。
「そうか、地上ではもう魔術が使えないのだな……」
哀愁が漂う声色。私はアダン様へ声がけを試みるが……どうすれば良いのか分からずまごついてしまう。狼狽えている私を見兼ねたのか、レナートさんは「落ち着いたら魔道具のある場所へとご案内しましょう」と提案してくれた。


