妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

 ――苦しい。
 死ぬのはこんなに苦しいことなのか……と私は目頭が熱くなったような気がした。

 先程までは苦しさからか足をバタつかせていたが、今はもうその気力も失われていた。徐々に遠くなる水面の光を見つめながらゆっくり、ゆっくりと水底に降りていく。
 何に対しても心が動じなくなって数年。私は死ぬ間際になって人の心が自分にあったのだ、と心から安堵した。私はもう死んでしまうのに、不思議。心はまだ生きることを望んでいるのだろう。
 
 でも、私の息が続かない。もうしばらくすれば、私は泉の中で冷たくなる。

 そう諦めたからだろうか……走馬灯のように今までの人生が頭の中に流れていく。

「もっと泣き喚くかと思ったのに、面白くないわね?! 命乞いしなさいよっ!」

 そう言って鞭で叩き続けたリリス。

 「叩かれる事に気づいても微動だにしないなんて……本当に気味の悪い悪魔の娘だわ」

 そう言ってヒールで足を踏みつける継母。
 そして実の娘であるにもかかわらず、冷遇し亡くなった母の代わりに罵詈雑言を私にぶつけ、今までの鬱憤を晴らす公爵。
 
 政略結婚で私の母と公爵の相性が最悪だったから……。
 公爵と継母の愛を私の母が引き裂いたから……。
 
 そう言われ続けてきたけれど、私はどうしたら良かったのだろうか。
 
 もう息が続かない。そう思って目を閉じ、近づきつつある死に手を伸ばす。
 だが、伸ばした手は不意に強い力で掴まれる。水底へ落ちていたはずの彼女の身体が温かいもので包まれたと感じたところで彼女の意識は途切れた。