妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

 どれくらい寝ていたのだろうか。
 眩しさを感じ目を開けた私は、見覚えのない部屋に首を捻る。だが、次第に泉へと入水した記憶やアダン様、レナートさんと出会ったことを思い出した。
 
 見回すと、部屋には誰もいなかった。
 ベッド横のテーブルには、水が置かれているようだ。透明何かで造られている水差しは、光が反射してキラキラと輝いている。
 それを見ていると何となく喉が渇いたような気になってくる。最後に水を飲んだのは、アダン様達に私の境遇を話していた時だろう。
 その時も一口いただいただけだったか。

 欲望のままに水差しに手を伸ばそうとして――。

「何もできないアンタが、水を飲めると思って?」

 不意に頭をよぎった異母妹の言葉。私は水差しの手前で手を止めた。そしてそれに触れることができずに手を下ろしたその時。

「それ、飲まないのぉ? アダンが君のために用意させた水だから、飲んでも良いと思うよ〜?」

 誰もいない部屋に響く声。
 声の方へ顔を向けると、そこにはシミや汚れひとつない真っ白い服を着た男性が椅子に座っていた。しかも手にはティーカップ持参。紅茶が入っているであろうポットは、宙に浮いている。
 一瞬で現れた男性に私は目を擦った。そしてもう一度その場所を見ると、変わらず男性が優雅にお茶を楽しんでいる。

 彼と目が合った瞬間、私は彼に声を掛けていた。

「あの、あなた様は……?」
「僕? 僕はセファー。この城の書庫の管理を任されてるんだぁ〜。君がエーヴァちゃん? よろしくぅ〜!」