妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

「なんだって!」

 セファーに別れを告げ、エルマーに走りながら話を聞く。
 その女性が岩の上に立った時、赤い光に包まれていたそう。あの岩も魔道具のようなもので、赤い光は神託で告げた人物と違う警告の色なのだ。泉の横にいる教皇のような出で立ちをしている男性が、眉間に皺を寄せて考え込んでいるけれど、後ろにいた者達が早く入水するように呼びかけていたらしい。

 時見の鏡へとたどり着くと、レナートが引き続き様子を見ている。慌てて彼の元へ向かうと、そこには岩の上に立っている女性。

「本来の聖務者はあの奥にいる娘のようです」
「奥の女の表情が醜悪すぎないか?」

 レナートとエルマーの言葉にアダンは首を縦に振った。その瞬間――。

 岩の上に立っていた女性が、無表情で一歩踏み出した。彼女の顔は自分が泉に身を投げる時と同じ……全てを諦めた時の表情。見ていられず、アダンは走り出そうとして最後に鏡を見ると、彼女の身体は宙に浮いていた。

 ――飛び込んだのである。
 
 誰が「あっ」と声を出したのかは分からないまま、アダンは走り出す。
 
「アダン! 女性が泉に入ったぞ」

 その言葉を受けて、アダンは街から泉の中へと飛び出した。セファーから借りた首飾りによって、水中でも息ができるようになっている。
 彼女の身体を確認した彼はすぐに手を伸ばし、エーヴァを助けたのであった。