妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

「寝たようだな……」
「はい。よほどお疲れだったのでしょう」

 安らかな寝息を立てているエーヴァを尻目に、アダンとレナートは音を立てずに部屋を退室する。彼らは先程彼女の様子を見守っていた使用人の女性――イルゼに世話を頼み、執務室へと戻って来たのだった。

 女神の神託と異なる者が入水した……何千年ぶりのことだろうか。

 ネレイダ王国は先程エーヴァに告げた通り、水の女神デューデの加護を与えられた国だ。この世界にはこのネレイダと同様に、他の神が加護を与えている国が幾つかあり、加護がある国同士交流も盛んだったりする。
 街は女神の加護があるために、外から目視で見ることはできない。もしネレイダや他の国を見るためには……他の神の加護を持っている、もしくは特殊な魔道具を利用する必要があるのだ。

 それ以外は魔道具で補っている。と言っても、エーヴァに話した街の中で息ができるようにする魔道具は女神デューデの作なのだが。何やら地上にもある『空気』と呼ばれるものを作り出す道具なのだという。
 そのため、街の中であれば人は暮らしていくことができる。現在至る所で魔道具が使用されているが、明かりなどの魔道具は人の手で作り出したものだ。

 そして今アダンがいる場所――ここはネレイダ王国の中心であるナヴァル=ティア城。一説には女神の涙で設立された王宮と言われている。この王宮はどちらかといえば大聖堂に似た雰囲気を持つ建築物で、城自体はこの国が建国されたと同時に建てられたらしい。
 今まで王宮の修繕は一度もなかったと聞いている。女神の手による建造物だからだろう。

 レナートは冷めた紅茶を取り替えるために部屋を出る。アダンが頬杖をついて物思いに耽っていると、そこに現れたのはセファーだった。