妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

 熱かった頬が更に、熱を持った気がする。

 しかもその後、時間の都合でドレス着用のまま、昼食へと向かうことになった私。普段のように昼食場所へと向かうと、既にアダン様は席についており、紙を見ながら紅茶を飲んでいるようだった。

 私はその姿から目を離せない。
 じっと静かにアダン様を見つめていると、彼は私がいることに気がついたようだ。手に持っていた紙をテーブルに置いて、こちらを向いた。最初は私の姿に驚いていたのか、目を見開いていたけれど、すぐに微笑みを浮かべる。

「似合っている。綺麗だ」

 その言葉と表情の破壊力に私は言葉を失った。アダン様は今までそのような言葉を自分から言わない人だとセファーさんやノアが言っていた覚えがある。
 私の胸は高鳴り、言葉を紡ぐことができない。身体は固まり、心の中では狼狽していると、後ろからノアの声が聞こえた。

「あー、エーヴァ、今日の姿かわいい〜! アダン様!」

 彼は私の横を駆け抜け、アダン様へと抱きつく。いつの間にか立っていたアダン様は、勢いよくやってきたノアを受け止めた。
 
「ノア、その姿もいいな」
「本当?! ありがとう!」

 ノアとアダン様のやり取りを見て、私は心の中が落ち着いてくる。
 そうか、アダン様は自分の殻を破ろうとして、皆に声を掛けているのか……私の早とちりのようだ。赤くなっている頬を一筋の風が吹いていく。その風が熱くなった頬を撫でるのが心地よく感じられた。

 ノアとアダン様が話している間に、私の心は完全に腑に落ちる。自分だけが特別でない、ということに。

 二人の仲睦まじい様子を見ながら、私は普段と同じように椅子に座る。

 ――その陰でイルゼが、肩を落としていたことに三人は誰も気が付かなかったのだった。