妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

「そうでしたか……いやはや、なんとお言葉を掛ければ良いのか……」

 私は自分の名前と立場を告げた後、異母妹の代わりに泉へ飛び込んだと話をする。だが、長くなるし告げるつもりもなかったので、公爵家でどのような目に合っていたかは伝えていない。
 けれども、私の話で粗方想像がついたのか……レナートさんは痛ましそうな表情で私を見ている。アダン様もこちらに視線を何度か投げかけていた。やっぱり心配してくれているのかもしれない。

 二人を見て、私の心はじんわりと温かくなる。久し振りに人の温かさに触れたからだろうか。

「ここでゆっくりするといい」

 急に耳に入って来た声はレナートさんよりも低く、凄みのある声。けれども、言葉の内容は非常に私を気遣ってくれるものだった。
 目から涙が溢れそうになるのを堪える。こんな声を掛けてくれたのはいつぶりだろう……。
 
「……ありがとうございます……」

 かろうじて涙をこぼすことなくお礼を言い切った私。安堵からか、大きくため息をつくとどっと疲れが襲う。
 目を擦り始めた私に気がついたのだろう。アダン様とレナートさんは顔を見合わせる。そしてレナートさんが私にゆっくり休むようにと微笑んでくださった。
 私はレナートさんの言葉に甘えて、枕に頭を乗せる。すると、頭を使ったからか……まだ泉に身を投げた時の疲れが残っていたのか分からないけれど、すぐに意識が途切れたのだった。