似てるようで似ていない私と君は

ーのっぽー
君は私を見つけるたびに、会うたびにそうやって言ってきた。
こいつ、めっちゃ失礼。
私が初めて彼に思ったことはそれだった。
第一印象は最悪。
私の中学校生活の二年目の春はそんなふうに始まった。

春休みが明けて、二年目の中学校生活が始まった。中1のときと違うことがいくつかある。一つは一年生のとき2クラスだったのが一クラスになったこと。もう一つは後輩ができること!私が、先輩になる!後輩ができる!!ワクワクする気持ちでいっぱいのまま、私、高橋唯は教室に足を踏み入れた。
「おはよー!私の席どこー?」真っ先に見つけたのは私の大好きな友達、西園寺琉花。
「おはよー!出席番号順だよー」「あ、そっか!ありがとー!」朝からのこのやり取りがもう楽しい。そして、気付いた。 待って、私部室いかなきゃじゃん!!やばい、集合時間遅れちゃう、! 私は吹奏楽部に所属しており、いろんな場面で演奏することがある。そして今日は新学期一発目であり、新一年生の入学式である。そのことを完全に忘れてた私は、荷物を自分の席に放り投げて、急いで階段を駆け上り部室へ行った。
「おはようございますっ!!セーフ…?」部室に入ってそういった私に、部員の一人である早坂みこは「唯ちゃん、遅いよー笑」と返した。「あれ?だめだったか…」そんなやり取りをしながら、楽器の準備をする。私の担当はサックスだ。最初任された頃は苦手だったが、今となっては思い入れのある大好きな楽器だ。楽器を出して、ウォームアップをして、合奏が始まる。みんなの音が一つになるこの時間が私は大好きだ。練習が終わり、入学式の会場である体育館へ向かう。「どんな子がくるかなー!吹奏楽部入ってほしいな〜」みことそんなことを話しながら、楽器を運んでいく。吹奏楽部は文化部もどきだと私は思っている。楽器を運ぶのに体力は使うし、肺活量も鍛えられる。運動部に手伝ってほしいな、と思いながらも楽器を次々運ぶ。そのとき、受付の紙が見えた。新一年生の名前がびっしりと書いてある。なかには小学校のとき一緒だった子たちもたくさんいた。名前を読んでいくと、一つ読めない名前があった。”出間纏枠” 不思議な名前。なんて読むんだろう?「唯ちゃーん、合奏するってー!!」「はーい!今行く!」そうして二度目の合奏をし、いよいよ一年生の登場。先生の指揮に集中し、手の合図で呼吸をする。演奏が始まり、新一年生が入場してきた。先生の指揮を見ながらも、入学してくる生徒に目がいく。ちっちゃ!歩いて入ってくる生徒はみんな小さい。身長が高い子もいるが、2,3人程度だった。全員が体育館に入り、入学式が始まる。新一年生の名前が呼ばれていくのを聞きながら、吹奏楽部の特権は入学式や卒業式に絶対に参加できることだなぁ、と思う。次々に呼ばれていく名前に耳を澄ます。同じ苗字の子、同じ名前の子、私と同じ名前の子…いろんな名前がある。私、全員の名前覚えれるかな?そんなことを考えていると、あっという間に入学式が終わった。そんな感じで新学期一日目は終了した。入学式以降は春休み前と同じような学校生活を過ごした。残念なことに体験入部に一年生は全然来てくれない。一方、陸上部やバレー部にはたくさんの生徒が行っていた。さらに、野球部にも意外と多くの人が体験入部に行っていた。いよいよ、入部届け締切が近づいてきたとき、4人の一年生が入部してくれた。あー、よかった。廃部は免れた…、なんて思いながら名前と顔を見ていく。全員、小学校で同じだった子たちだ。びっくりなことに、男子もいる。蓮、らい、えりか、なるみ。それが新メンバーの名前だった。そして、えりかは私と同じ苗字”高橋”だった。
へー、まあここらへんでは珍しくないしね。
なんて思いながら、楽器の説明をしていく。そんなこんなで毎日は過ぎ去っていき、一年生が学校生活に慣れ始めた頃、部活が終わってグラウンドの横を通りながら帰ってるとき三年生の野球部に「さいならー」と言われた。それに続いて、1、2年生もさいならー、と言う。野球部では下校する生徒に挨拶をするのは当たり前。「さようならー!」そう返したとき、一人の男子と目があった。身長の高い、肌がよく焼けた男の子だった。なんとも思わずにそのまま家へ帰った。後にその人の名前を知ることになるのだが…