マーガレット

「ちょ、ちょっとヴァル! やめてよ。私が殺される!」

『良いではないか。そうなったら俺とずっと一緒にいられるのだからな』

 とても澄んだ聖神力を持っているらしい私は精霊王のお気に入りらしく、死んだら一生精霊の国で彼と過ごすことになっている。

「どんな契約をしたらそうなる。もっと自分を大切にしろ」

 ヴァルに首元を狙われているにも関わらず、陛下は私に説教をする意味の分からない状況に取り敢えずヴァルを引き離し、クマの目の呪具をどうにかしてほしいとお願いした。

『容易い』

 あれだけ不機嫌だったにも関わらず、私のお願いには簡単に返事をして呪いを解くためにクマと睨めっこを始めた。

「それで。どのような契約をした」

「五歳の時に義両親が馬車の事故に遭ったんです。十一年前の話です」

「事故で伯爵が生死を彷徨っていると噂になったな」

「はい。実際義父は本当に危ない状態でした。死ぬかもしれないという恐怖を初めて体験し、怖くて部屋に閉じこもっていた私の前に現れたのがヴァルです。義父を癒す代わりに契約しろと」

 小さい頃の私は魂を貰うという意味を理解できなくて、その場の勢いで了承した。

 あとになって魂を貰うと言うのは一生一緒に暮らすことだとヴァルに教えられ、絶望したのを覚えている。だってその当時今すぐにでも連れて行かれそうな雰囲気だったから。

「死んでから魂をもらうって約束してもらってますし、精霊の国にも興味あるので後悔はしていません」

「そうか」

 本当に後悔はしていないんだけど、陛下は何かを考えるように黙ってしまった。

『終わったぞマーガレット』

「ありがとうヴァル。陛下、これで呪いは進行しないかと」

 進行と言っただけでまだ終わっていない事に気づいた陛下は、次は何をするのかと尋ねられた。

「ではもう一度殿下のもとへ行きましょう。ヴァルはお疲れ様。また後でね」

『いつでも呼べ』

 呪いを解除できてご機嫌なヴァルを見送り、私たちはまた殿下が眠っている部屋へと戻ることに。