マーガレット

「そろそろ仕事に戻ってもよろしいでしょうか? こう見えて忙しいので」

 今は特に何もないけど。

「あ、養子の件は次何かあったら解消という事で」

「ふ、ふざけるな! 親を何だと思っている。お前をここまで育てたのは私だぞ!」

「それは知りませんでした。私はてっきり師匠が全てお金を出し、勉強を教え、服まで与えてくれていたんだと。食事も満足に取れなかった時期もあったので、伯爵家は養子にお金をかけれるほど裕福ではないのかと思っていました」

 師匠と出会った時に痩せこけた私を見て泣きそうになっていた。
 私はアレが普通だと思っていたからあの時師匠が何故泣きそうだったのか理解できず、ぎこちない笑顔を向けたのを覚えている。

「もし養子を解消したら金を請求するぞ! これまで使った」

「大した額ではないのでは? でもそうですね。解消してくれるならこれを差し上げます」

 そう言って私は空間から一つの宝石を取り出した。

「精霊王の涙。知っていますか? ブルーサファイヤとも呼ばれる精霊王の涙は希少価値が高く、このサイズでも宝石に詳しい方なら喉から手が出るほど欲しがる物なんですが」

 その名の通り精霊王が泣いたらできる宝石。
 書籍では『人々を慈しみ涙を流した時にできるもの』だと書かれているが、実際は欠伸をしたり笑い過ぎて泣いたりしても出来る為、死ぬほど持っている。

 ヴァル本人は宝石に興味がないからそこら辺に捨てようとするし、お金になるなら貰っておこうと集めていた。

「う、嘘! 公爵令嬢も皇后様も手に入れられないって言っていた精霊王の涙?! 何でお姉様が持ってるのよ!」

「偶然拾ったのよ。鑑定済みで、これが証明書」

 宝石店の名が入った証明書を見せると二人の態度が変わった。