マーガレット

 次の日、指定された時間に執事がやってきて、私をとある部屋の前まで案内してくれた。

 部屋の中には殿下はもちろん、両陛下がいることを教えられ吐きそうになったけど、ここで逃げたらそれこそ国外追放になり得ると思い勇気を振り絞って扉を開けてもらった。

 すると中には何年も前に遠くから見た姿のお二人と、そのお二人の近くにはベッドで横になっている殿下の姿が。

「私たちのことは知っていると思うからお名前を伺っても?」

「初めまして。マーガレット・リリアと申します」

 皇后殿下がとても優しい笑みを浮かべ私の名を尋ねる。
 心優しい皇后様という噂は本当らしい。

「貴女の前に皇子の様子を記録した物はそちらに置いてあります。参考にしてみてください」

「ありがとうございます」

 何枚も重ねられた紙には殿下がどうのよな様子で、治癒をどの程度施したかなど様々なことが書かれている。
 中にはセクハラまがいな内容もあった為、近くにいた侍女に捨てるようお願いた。

 二人目の候補者は時間をかけて隅殿下の体を隅々まで物色したみたいだ。

「んー」

 正直。この部屋に入った時から殿下の周りには姿が見えないくらい(もや)がかかっている。
 辛うじて顔が分かる程度の靄が。

「呪いですね。このレベルになると聖女の治癒は痛みを感じるだけだったのではないでしょうか」

「……ほぉ。一番下っ端だと聞いていたが中々。確かに他の聖女が皇子に聖神力を使った際、悲鳴を上げるほど痛がっていた」

「呪いと聖神力は相性が悪いので、ナイフで刺された様な痛みが出るはずです。長時間治癒を施していたと最初の方は記していますが、間違った治癒を行うと死ぬ場合もあるので」

 どれほど危険な行為だったのか研修中に学んだはず。それなのに悲鳴を上げる殿下に治癒を長時間施すなど、殺そうとしているのと殆ど変わらない。