マーガレット

「失礼します」

 他の患者が寝ていた所とは違ってベッドと机があるだけの部屋。そこにとても苦しそうに眠っている男性が一人、酷い火傷を負いながらもそのどれもが古いもので、魘されている高熱とはあまり関係なさそうに見える。

「ぅうっ……」

「大丈夫ですか?」

 声をかけるとこちらを一瞬だけ見た彼はすぐに目を閉じた。

「このまま勝手に治療しても他の方みたいに効かないと思うし、どうしよう」

『ぶん殴って起こせばいいだろう』

「いつの間に出て来たのよ。ちゃんと他には見えないようにしてる?」

『ああ。だが素質があれば見えるだろうな』

 その素質の基準が分からないから適当に出てこないでって言ってるのに。

 このまま彼を放置するのは駄目だと思い、意識が戻るまで近くで見守ることにした。何度も魘されたり落ち着いたりを繰り返しているが、熱は相変わらず高いまま。


 他の聖女が食事を部屋に運んでくれてそれを食べながら様子を伺っているけど、起きる気配が全くない。

「起きないね」

『寝かせてやればいいだろ。永遠に』

「それは違うでしょ。少しでも話せるなら話して治療をさせてほしいんだけど」

 夜になっちゃったし今日はもう無理そう。

「失礼します。マーガレット様。夜は寒いみたいなので毛布を持ってきました」

「何から何まですみません。他の方はどうですか?」

「皆寝込んでいたのが嘘かのように元気です。二日間薬湯を飲めば面会を許可すると伝えたところ、とても喜んでいました」

 それはよかった。薬湯と言っても少し苦いお茶のような味で、子供は苦手かもしれないけど頑張ってくれているみたい。
 持ってきた飴を最後にあげると言ったら涙目になりながらも、嬉しそうに飴を食べるそうだ。

「それは良かった。こちらの方はまだかかりそうなので、あちらを任せてもよろしいですか?」

「はい! お任せください」

 丁寧に頭を下げて退出した彼女は私よりも十は上のベテラン。
 そんな方が文句ひとつ言わずついて来てくれるのはとてもありがたい。