マーガレット

 ――今代の皇宮聖女はマーガレット・リリアとす。

 聖女統括式よりも遥かに大きな式典を終え、日常で何か変わったかと聞かれたら部屋が出来た事くらいで、後は特に何も変わらなかった。のんびりできる時間が増えたくらい。

「あんなに小さかったマーガレットが立派になったな」

「カリーナ様と出会ったの十歳の時なんでそんなに小さくはありませんよ」

 温室に現れたカリーナ様とお茶をしながらあれこれ互いに報告するが、会話の半分以上が昔話。
 こう見えてこの方は私の師匠であり恩人でもある。

「ほぅ。ならば最後まで私にソレを一切伝えなかったのは幼いからではなく、義務を怠ったと思っていいのか?」

 ソレと言ってつつかれた左手の甲。

「何のことです?」

「お前を聖女として立派に育てたのは私だ。それに皇宮聖女代理として選ばれたくらいの実力を持っている。何があるかくらい分かるわ。手袋を外さなくてもな」

 精霊と契約している者は教会に報告しなければならない。それがどんな人でも立場でも報告の義務がある。
 聖女の居場所を作ったのが教会。だから聖女は教会に属し、尽くしていかなければならないという昔からの伝えがあり、精霊と契約している者は当然、その他の者よりも尽くす。

 それが教会のルール。

「大事な弟子を教会の奴隷にするのは許せなかったからな。ま、私はこの国の人間じゃないから何かあれば帰れる。問題はないだろう」

 適当な所がある師匠の昔からの口癖は、取り合えず問題はないだろう。
 どこか安心できるその言葉は私にとって魔法の言葉。

「何よりも研修時に立ち会った教会側の人間も見抜けないくらいだ。余程強い精霊と契約しているのだろ? ならば一層黙っておくのが師匠の務めよ」

「カリーナ様ぁ~!」

「抱きつてもいいんだぞ?」

「いや。それは大丈夫です」

 誰よりも戦闘狂なカリーナ様に抱き着いたら普通に痛い。服で分かりづらい胸とバキバキの筋肉で潰される。