マーガレット

「では右手を私の手のひらの上に置いてください」

 右手の上に殿下の右手を乗せるよう言うと、何の躊躇もなくスッと置いた。
 普通なら女性に触れるのはとか、気安く触れようとするなとか言ってお高く留まるタイプが多いのに、そう言うのは気にしないみたい。

 ま、治療だしね。それが当たり前か。

「温かいな」

「聖神力を流しながら怪我の具合を診ているんです。それが温かいって感じる方も珍しくはありません」

 話しながら殿下の腕の様子を探る。怪我をしてからそれなりに経っているからか傷自体は綺麗に治っているし、痕は残っていない。――けど、中身の処置が雑過ぎてこれが腕が上がらない原因を作りだしているんだと思う。

 例えるなら外装だけ綺麗な家のよう。
 と殿下にそのままお伝えした。

「つまり俺を治療した者が雑に終わらせたと? 一応皇太子なんだが」

「原因は分かりませんがこのような雑な治療をしたらどうなるかくらい、聖女なら分かるかと」

「統括が来てくれたんだ。俺の治療のために」

 それなら余計分かるはず。
 聖女統括はその代の一番力がある人が選ばれるから見逃すってことはない。

「……君にこれが治せるか?」

「はい。良ければ今治しましょうか? 大した力も使いませんし」

「頼む」

 私は当時のことを知らないから原因は分からないが、殿下は何か思い当たる節があるのか険しい表情をしている。

「この件で何か聞かれたら俺が無理やり君に頼んだと言ってくれ」

「分かりました」

 私も面倒ごとは嫌だから。特に皇族の面倒事ほど関わりたくない。

 すぐに治療を終わらせると殿下は腕の調子を確かめ、完全に治ったと嬉しそうに上下に動かし『ありがとう』と礼を言った。
 その後、少しだけ話をしてから部屋を出た彼にヴァルは終始ツンツンしていた。