地獄で私と二人きり

 バーの中には、バーテンダーらしき男の人がいた。

「こんにちは、中崎蓮斗(なかざきれんと)くん。そちらの女性は?」

「俺の恋人。」

 どうやら、2人は知り合いらしい。

 あまり人に懐かないアレンが、珍しい。

 それに…今のアレンの名前も、とっても素敵だな。

 蓮斗、かぁ。カッコいい名前だな。

 勿論、アレンがカッコいいのは当たり前だけど!

「顔赤くない?大丈夫?」

 私のことを心配して、頭を撫でるアレン。

「だ、大丈夫だよ!アレン!」

「なら、いいんだけど…」

 心配かけちゃったな…久しぶりに会ったのだから、心配かけたくないんだけど…

 でも、理由は言えない!恥ずかしいし!

「私の名前は、東村 理久斗(ひがしむらりくと)です。貴方の名前は?」

 そういえば、バーテンダーさんに名乗っていなかったな…

「私の名前は、綿矢理沙です。東村さん、よろしくお願いします!」

 私が名乗ると、東村さんは満足そうに笑った。

「名前で呼んでも大丈夫ですよ?」

 オトナの余裕を感じさせる笑みに、ドキリとする。

 まぁ、東村さんもアレント違ったベクトルでかっこいいけど…

 アレンのほうがカッコいいもん!

 今の気持ちは、モデルさんとかに思う気持ちと同じ!

 私が、名前を呼ぶことに断りを入れようとすると、先にアレンが口を開く。

「辞めてください、東村さん。俺の理沙を口説かないでください。」

 アレンが怒った口調で、東村さんに話しかける。

 それよりも…今、私のことを「理沙」って呼んだよね?

 しかも、「俺の理沙」って!!

 私は恥ずかしい気持ちと、嬉しい気持ちでグチャグチャになっていた。

「しつこい男は嫌われますよ?」

 私があわあわしていると、東村さんから、思いもよらない言葉が出てきた。

 …私は、アレンのそうゆう嫉妬深いところも、好きなんだけどな〜。

 私も嫉妬することが多かったから、言葉と行動で好意を伝えてくれるのは、とっても嬉しかったし。

 …アレンは、何でも出来たから、余裕がなくなるくらい愛してくれるアレンが、私も大好きなのに。

 私が1人で考えていると、アレンは私に抱きついて、私に不安げに聞いてくる。

「理沙は、こんな俺は好きじゃない?」

 悲しそうに聞いてくるアレンに、私はアレンの頭を撫でながら答える。

「私は、蓮斗のそうゆうかっこ悪いところも大好きだから。」

 私はニッコリと微笑むと、蓮斗は私を抱き上げて、近くのソファーに私を上にして座った。

 そして、蓮斗が私の肩に顔を埋めながら話す。

「本当、理沙には敵わない。俺の全部を愛してくれるのは、理沙だけ…。大好き。」

 照れくさいことをバンバン言ってくる蓮斗に、私はタジタジです。

 もう無理です。私の負けです。

 私をここまでドキドキさせるのは、蓮斗だけだっていつになったら分かってくれるのかな。

 蓮斗が私に敵わない、なんてことないのにね。

 私の全部を愛してくれるのも、蓮斗だけなのに。

 空気を読んでくれたのか、東村さんはそこにはいなかった。

 久しぶりの再会に感謝して、2人の時間を楽しんだ。